ヴェンドリンゲン - ウルム高速線

ヴェンドリンゲン - ウルム高速線：ドイツを繋ぐ高速鉄道

ヴェンドリンゲン - ウルム高速線は、ドイツのバーデン＝ヴュルテンベルク州に位置し、ヴェンドリンゲンとウルムを結ぶ高速鉄道です。この路線は、シュヴァーベン・ジュラ山脈を貫通し、最高速度250km/hでの運行を可能にしています。主にアウトバーンA8と並走し、西のシュトゥットガルトと東のウルム中央駅を結ぶ役割を担っています。この高速線は、シュトゥットガルト - アウクスブルク間の高速新線および改良線プロジェクトの一環として建設され、ヨーロッパ回廊の一部を構成しています。

沿線概況

このプロジェクトは、ドイツ鉄道の「ネッツ21」計画の一環として、フランクフルトからミュンヘンまでの所要時間を大幅に短縮することを目的としています。2014年時点での予算は29億3920万ユーロで、トンネル工事の難易度やETCSの設置などが予算に影響を与えました。工事区間は、以下の通りいくつかの工区に分割されています。

2.1a/b工区: ヴェンドリンゲンでシュトゥットガルト21プロジェクトの1.4工区と直結される区間。
2.1c工区: ヴァイルハイムとアイヒェルベルクの間で自動車道と並行する区間。
2.2工区: アルプ上昇区間であり、ボースラーメントンネル、フィルス川高架橋、シュタインビュールトンネルなどが含まれる区間。
2.3工区: アルプ高地で自動車道と並行する区間。
2.4工区: ウルム市内へ向かうアルプ下降トンネル区間。
2.5 a1工区: ウルム中央駅へ接続するための工事区間。

列車はヴェンドリンゲン分岐点でアルプフォアラントトンネルに入り、A8およびヴェンドリンゲン - オーバーレニンゲン線の下を通過します。その後、A8と並行して東へ進み、アイヒスフェルトトンネルを通過。ボースラートンネルでは、高度213mを上昇し、ジュラ紀の地層を通過します。フィルス川高架橋を渡り、シュタインビュールトンネルへ。ライヒンゲン北方からは地上に出て、A8と共に進みます。メルクリンゲン駅を通過後、ドルンシュタットとレールの間でA8から離れ、アルプ下降トンネルに入り、ウルム中央駅へと向かいます。

この路線には、ETCSレベル2の列車制御装置が設置され、変電設備はメルクマールとナーベルンにあります。また、GSM-Rによる通信システムも提供されています。

歴史

高速鉄道建設の背景

1985年のドイツ連邦交通計画で、プロヒンゲン - ギュンツブルク間の新線建設・在来線改良事業が計画されました。交通工学者のハイメアルは、在来線の改修だけでは最高速度が制限されるため、シュトゥットガルトの地下駅とウルム方面への高速新線を提案しました。1980年代末には、バーデン＝ヴュルテンベルク州で複数の案が検証されました。

1991年10月には、H企画とK企画が選定されました。H企画は、A8と並行する高速新線を建設する案で、K企画はプロヒンゲン - ギュンツブルク間を複々線とする案でした。1992年、ドイツ政府はカールスルーエ大学にシュトゥットガルト - ウルム区間の改良線と高速線に関する研究を依頼し、同年9月15日に州政府は自動車道の沿線について賛成しました。シュトゥットガルト、ウルム、アウクスブルクの高速線および改良線は、ドイツ連邦交通計画1992で優先度の高いプロジェクトとして含まれました。

計画段階

1994年4月18日にシュトゥットガルト21計画が公開され、1995年11月に連邦政府、州政府、ドイツ鉄道がプロジェクトに関する協定を締結。しかし、プロジェクトの実現は延期され、1999年にはドイツ鉄道が完工は2010年以後になると表明しました。2004年10月には、建設費用の予測値が上昇しました。

工事開始は遅延し、2006年10月に高速新線建設について会談が行われましたが、建設と関連したシュトゥットガルト21の実行決定は延期。2007年7月19日に建設計画の移行が決定されました。2013年9月1日付にDBプロジェクト・シュトゥットガルト-ウルム間有限会社がプロジェクト監督業務を引き受けました。メルクリンゲン＝シュヴァーベン・ジュラ駅の建設は2015年の費用便益分析と自治体の費用分担決定の後に実行されました。

建設工事と試運転

予備作業は2010年秋に開始されましたが、シュトゥットガルト21に関する仲裁の間に一時的に中止。起工式は2012年5月7日に行われました。2010年11月に2.1c工区で、2011年12月に2.3工区で工事が開始されました。2013年にはシュタインビュールトンネルとボースラートンネルの工事が開始され、2014年にはフィルス川高架橋が着工。2017年11月にはアルプフォアラントトンネルの掘進が始まりました。2019年8月には、アルプ下降トンネルで初めて線路が設置され、2020年11月に電車線の設置作業が始まりました。2022年1月31日に電車線に電力が供給され、2月に電気運転試験が始まりました。

開通以後

2022年12月9日に公式的に開通し、12月11日に旅客・貨物輸送が正式に開始されました。

運行形態

旅客運送

現在、ヴェンドリンゲン連結線とアルプストンネル区間では単線線路のみが運行可能で、ICE列車の全てがとりあえず通行していません。ICE列車が120分ごとで運行され、ウルム中央駅のみに停車します。地域輸送では、地域間快速列車系統が導入されています。

貨物運送

貨物列車の速度は通常120 km/hで、特定の列車は160 km/hまで許容されます。最大貨物重量は、ウルム方面の場合1065トン、シュトゥットガルト方面の場合1445トンに制限されます。旅客列車と貨物列車に通行優先権が与えられています。

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