ヴォックス (楽器メーカー)

VOX：音楽史に名を刻む英国発祥のギターアンプブランド

VOXは、イギリスを拠点とする楽器メーカーであり、その中でも特にエレクトリックギターやベース用アンプ、エフェクターで高い知名度を誇ります。日本においてはコルグの一部門であるKID（KORG Import Division）が販売を担っています。

VOXアンプ：伝統と革新の融合

VOXアンプは、独特のデザインとサウンドで世界中のミュージシャンを魅了してきました。多くのモデルに共通する特徴として、上部に配置された入力端子やコントロール類、特徴的なチキンノブと呼ばれるつまみ、そして前面左上にあるVOXロゴ、そして何よりも目を引く菱形模様のスピーカーグリルが挙げられます。近年のモデルでは、この伝統的な菱形をモチーフにした穴が空いた金属製カバーを採用しているものもあります。

ビートルズが愛用したことで伝説的な存在となったVOXアンプ。その歴史は深く、AC-15、AC-30、AC-50といったモデルは、ビートルズのサウンドを決定づける上で重要な役割を果たしました。バンドの規模拡大に伴い、VOXは彼らの要望に応えるべく、よりパワフルなアンプを開発し続けました。

近年では、クイーンのギタリスト、ブライアン・メイをフィーチャーした「Brian May Special」や、真空管アンプのサウンドをコンパクトで手頃な価格で実現したValvetronixシリーズが人気を博しています。Valvetronixシリーズは、小さな真空管（プリチューブ）とデジタル技術を巧みに組み合わせることで、本格的な真空管アンプのトーンを再現することに成功しています。

多様な製品ラインナップ：幅広いニーズに対応

VOXは、アンプ以外にも、様々なエフェクターや周辺機器を製造しています。代表的な製品として、ワウペダルV847やマルチエフェクターTONElabなどがあり、これらはプロミュージシャンからアマチュアまで幅広いユーザーに愛用されています。また、小型で持ち運びしやすいヘッドホンアンプamPlugシリーズや、USBオーディオインターフェースamPlug I/Oなども展開しています。

アンプは、カスタムシリーズ（AC30C2/C2X、AC15C1、AC30VR/AC15VRなど）、Valvetronixシリーズ（VT15、VT30、VT50、VT100など）、AGAシリーズ、Night Trainシリーズ、AC4シリーズ、MINIシリーズ、Pathfinderシリーズなど、様々なモデルがラインナップされています。それぞれのモデルは、出力や機能が異なっており、ユーザーのニーズや好みに合わせて選ぶことができます。

VOXギター：個性的なデザインと高い演奏性

VOXは、アンプだけでなくギターやベースも製造しています。1960年代には、イタリアのEkoやCrucianelli社と提携し、独特のフェイズスイッチやファズスイッチを搭載したモデルを生産。70年代には日本製も多く、マツモクやテスコなどのメーカーが製造に携わりました。

中でも、ブライアン・ジョーンズが使用したティアドロップギター（マーク6）やマーク4ベースといったモデルは、その独特のデザインとサウンドから高い人気を誇り、幾度となく復刻されています。ボディが五角形の西洋棺桶型ギター「ファントム」シリーズも、多くのミュージシャンから支持を集めており、世界中でコピーモデルが作られました。日本ではカワイによる生産が盛んで、輸出も多数行われました。

VOXギターは、初心者向けの学生モデルからプロ仕様のモデルまで、幅広いラインナップを誇ります。初期のモデルには、シャドウズ人気によるストラトキャスターやプレシジョンベースのコピーに近い機種もありました。70年代には、ギブソンSGやグレッチカントリージェントルマンを彷彿とさせるモデルも登場しました。ホロウボディのモデルも多く、主にEko社によって製造されました。

VOXは、長年にわたる歴史と革新的な技術によって、音楽業界に多大な貢献を果たしてきました。これからも、音楽シーンを彩る、魅力的な製品を生み出し続けることでしょう。

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