ブライアン・メイ

ブライアン・メイ：天文学とロックの融合、そして動物愛護への情熱

ブライアン・ハロルド・メイ（1947年7月19日 - ）は、イギリスを代表するミュージシャンであり、同時に天体物理学博士の学位を持つ天文学者です。ロックバンド・クイーンのギタリストとして世界的な名声を得た彼は、自作のギター「レッド・スペシャル」と独自の奏法で、ロック史に燦然と輝くサウンドを生み出しました。

音楽への情熱と才能

彼のギター演奏は、ピックの代わりに硬貨を使用するなど、独特のスタイルで知られています。コインを使うことで指先の繊細なニュアンスを音に反映させ、滑らかな音から力強いサウンドまで幅広い表現を可能にしています。この独自のテクニックに加え、マルチトラックレコーディングを駆使した凝ったギターサウンドは、当時、シンセサイザーの音と間違われるほど斬新で、クイーン初期のアルバムジャケットには「シンセサイザー不使用」と明記されたほどでした。

クイーンでの活動では、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のような代表曲から、ハードロック、プログレッシブロック、カントリー風、バラードまで、多様な楽曲制作に貢献。リードボーカルも担当するなど、その才能は多方面に渡ります。

ソロ活動では、エドワード・ヴァン・ヘイレンらとの共演や、本格的なソロアルバムのリリース、映画音楽の制作など、精力的に活動。また、フー・ファイターズやガンズ・アンド・ローゼス、ブラック・サバスなど、数々の著名ミュージシャンとのセッションにも参加しています。さらに、慈善活動にも積極的に関わり、多くのアーティストと共演したチャリティコンサートにも参加しました。ポール・ロジャースとのユニット「クイーン+ポール・ロジャース」、アダム・ランバートとの「クイーン+アダム・ランバート」での活動も記憶に新しいところです。

知的探究心と天文学への貢献

メイは、ロンドンのインペリアル・カレッジで学び、大学院では宇宙工学を専攻。クイーンの活動と並行して中学校の教師を務めながら研究にも従事していました。音楽活動に専念するため一旦研究を中断しましたが、35年後、天体物理学の研究を再開。スペイン領カナリア諸島の天文台で研究を行い、論文を完成させ、博士号を取得しました。2006年には、長年の研究成果をまとめた天文学に関する書籍『BANG! 宇宙の起源と進化の不思議』を出版しました。小惑星探査機「はやぶさ2」のリュウグウ着陸成功を自身のTwitterで祝福するなど、天文学への深い関心を示しています。

レッド・スペシャル：伝説のギター

メイのトレードマークである「レッド・スペシャル」は、彼の父と共に手作りされた、オーク材や古材を使用し、全てカスタムメイドされたギターです。その独特なルックスとサウンドは、彼の音楽に欠かせない要素であり、多くのギタリストに影響を与えました。このギターの音色を再現したエフェクターやアンプも発売されています。

動物愛護への熱い想い

メイは熱心な動物愛護活動家としても知られ、2010年には動物愛護団体「Save Me Trust」を設立。野生動物の保護、特にアナグマ保護を訴え、イギリスのニュース番組にも出演するなど、積極的な活動を行っています。グラストンベリー・フェスティバルへの出演拒否も、アナグマの殺処分に対する主催者との対立が理由の一つとして挙げられています。2012年には動物の権利擁護団体PETAより「パーソン・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

栄誉と功績

彼の功績は広く認められ、2005年には大英帝国勲章3等を受勲。そして2023年にはナイトの爵位を授与され、「サー」の称号を得ています。

音楽、科学、そして社会貢献

ブライアン・メイは、ミュージシャン、天文学者、動物愛護活動家という多様な顔を持つ稀有な存在です。音楽、科学、社会貢献というそれぞれの分野で卓越した才能と情熱を注ぎ込み、世界に多大な影響を与え続けています。その功績は、音楽史のみならず、科学史、そして社会貢献の歴史にも刻まれることでしょう。

もう一度検索