ヴォルガ・バルト水路

ヴォルガ・バルト水路：ロシアを繋ぐ歴史と未来

ヴォルガ・バルト水路は、かつてマリインスク運河として知られた、ロシアを東西に貫く重要な水運路です。ヴォルガ川とバルト海を結ぶこの水路は、全長368キロメートルに及ぶ運河と河川から成り立っています。19世紀初頭の建設以来、幾度かの改修を経て、現在ではヨーロッパロシアにおける内陸水運網の要となっています。

歴史：ツァーリと運河

その歴史は、ピョートル大帝がスウェーデンからフィンランド湾を獲得した18世紀初頭に遡ります。ロシアの奥地とバルト海を繋ぐ安全かつ効率的な水路の必要性から、ヴイシニー・ヴォロチョーク運河網が建設されました。その後も、ラドガ運河など、大規模な運河建設プロジェクトが展開されました。

アレクサンドル1世治世下では、ヴイシニー・ヴォロチョークに加え、チフビン運河とマリインスク運河が建設され、特にマリインスク運河は重要な水路として発展しました。ルイビンスクから始まり、シェクスナ川、ベロエ湖、コヴジャ川、ノヴォマリインスキー運河、ヴィテグラ川を経てオネガ湖に至るこの運河は、19世紀の水理工学の傑作と言えるでしょう。オネガ湖からはスヴィリ川、ラドガ湖、ネヴァ川を経てフィンランド湾へと至ります。

1829年には北ドヴィナ運河が完成し、シェクスナ川から北ドヴィナ川へと繋がる新たなルートが加わりました。19世紀末までに、ベロゼルスキー運河、オネズスキー運河、ノヴォラドズスキー運河が建設され、小型船舶の航行が容易になりました。さらに1930年代には、白海・バルト海運河が建設され、水路網はさらに拡大しました。

ソ連時代の改修と近代化

ソ連時代、マリインスク運河は継続的に改修されました。1936年と1952年にはスヴィリ川に閘門が建設され、シェクスナ川にも閘門が設置されました。しかし、最も重要な改修は1960年から1964年にかけて行われ、新しいヴォルガ・バルト水路が開通しました。39基あった古い木造閘門は7基の近代的な閘門に置き換えられ、1995年にはさらに1基の閘門が追加されました。これにより、全長210メートル、幅17.6メートル、深さ4.2メートルの船舶の航行が可能となり、チェレポヴェツからサンクトペテルブルクまでの航行時間が大幅に短縮されました。

新しい運河は、部分的に古いマリインスク運河の経路を踏襲しつつも、新たなルートも取り入れています。8基の閘門のうち6基は北側の斜面に集中し、合計80メートルの水位差を克服しています。残りの2基は南側の斜面に位置しています。

現代の役割と課題

現在、ヴォルガ・バルト水路は、石油や木材の輸送、観光ルートとして重要な役割を果たしています。しかし、老朽化による問題も指摘されています。長年にわたる浚渫作業の不足により、水深や水路幅が減少しており、大型船舶の航行に支障が出ているのです。閘門の補修も喫緊の課題となっています。ロシア政府は、この重要な水路の維持管理に引き続き取り組む必要があります。ヴォルガ・バルト水路の未来は、ロシア経済と社会の未来に深く関わっています。

もう一度検索