ヴォークレイン式複式蒸気機関

ヴォークレイン式複式蒸気機関とは

ヴォークレイン式複式蒸気機関は、蒸気機関車に搭載されるタイプの複式機関です。この機関は、1889年にアメリカのボールドウィン・ロコモティブ・ワークスに勤務していたエンジニア、サミュエル・ヴォークレインによって考案されました。彼の設計は、従来の単式膨張機関と同じスペースで複式膨張機関を収めることができ、運転効率を改善しようとするものでした。

設計と利点

ヴォークレイン式機関では、高圧と低圧の両方のシリンダーを一つのピストンバルブで駆動可能でありました。このシステムにより、燃費の向上が図られると同時に、より安定した運転が可能となりました。実際には、トルク変動が相対的に小さくなり、空転もしにくくなる特徴がありました。これは複式機構のカットオフが長いことが関係しています。

課題と限界

しかし、この設計には欠点もありました。複式機関を採用することで、レシプロマスの動きが増大し、その結果、振動が激しくなることがありました。この振動は運転時に快適さを損なう要因となり、同時に燃費効率の改善が進むにつれ、熱交換器の使用が一般的になったため、単式機関と比較した際の燃費の差が小さくなってしまったのです。これらの要因から、ヴォークレイン式機関の普及は次第に少なくなり、他の設計へと置き換わっていきました。

採用された機関車

ヴォークレイン式複式蒸気機関は、いくつかの著名な蒸気機関車に搭載されました。代表的なものには、デンバー・アンド・リオグランデ・ウェスタン鉄道のK-27型、また日本では国鉄8000形蒸気機関車9号機が含まれます。これは1892年に輸入された日本初の複式機関車となります。その他にも、国鉄3380形、3500形、3700形、5060形、8250形、8450形、8500形など、複数の形式がこの機関を採用しています。この多様性は、技術的な進歩や新しいデザインの試みを反映しています。

まとめ

ヴォークレイン式複式蒸気機関は、蒸気機関車の歴史において重要な役割を果たした設計理念であり、特に燃費効率の面で多くの利点をもたらしました。振動の問題や他の技術との競争から、その活躍は限られましたが、数多くの機関車に搭載され、鉄道の発展に寄与したことは間違いありません。

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