一式防空気球

一式防空気球

一式防空気球は、大日本帝国陸軍が開発・運用した無人の阻塞気球です。1938年初頭に「多葉式防空気球」として研究が始まり、藤倉工業での気嚢試作、東京工業大学航空科での風洞実験を経て開発が進められました。神戸製鋼と東京製鋼では、従来の輸入品に代わる日本製繋留索の研究も行われ、1939年に完成。翌1940年には気球本体が完成し、安房鴨川海岸で昇騰試験が開始されました。試験では最大3,600mの高度を記録しましたが、試作機は昇騰中に繋留索が切断し、行方不明となるアクシデントもありました。

これらの試験を経て、1941年に「一式防空気球」として制式採用。その後、1945年まで生産と運用が続けられました。製造は東京第一陸軍造兵廠と相模陸軍造兵廠が担当し、それぞれ多くの企業が協力しました。

特徴

気嚢の断面が6つの葉状になっている点が最大の特徴で、この形状から「多葉式」とも呼ばれました。この構造により気流に対する性能が向上しています。また、空気抵抗を減らすために、気嚢内部にゴム紐を収める方式を採用し、昇騰高度も引き上げられました。価格は1組あたり約43,500円でした。

諸元

全長：約20.6m
気嚢最大径：約7.8m
気嚢最大容積：約550立方メートル
重量：約190kg
標準昇騰高度：約2,700m
繋留索全長：約6,000m

製造に関わった企業

東京第一陸軍造兵廠：藤倉、東京製鋼、日本製紐、中央ゴム
相模陸軍造兵廠：三菱重工業、日本特殊陶業、澤藤電機、矢崎電線、門田鉄工所

参考文献

高橋昇「高空の監視役『バルーン』ノウハウ講座」『丸』第37巻第7号、潮書房、1984年
秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年
* 佐山二郎『日本の軍用気球 知られざる異色の航空技術史』潮書房光人新社、2020年

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