相模陸軍造兵廠

相模陸軍造兵廠：戦車の心臓部とその後

相模陸軍造兵廠は、第二次世界大戦下の日本陸軍において重要な役割を担った兵器工場でした。現在の神奈川県相模原市中央区に位置し、戦車や関連部品の製造、さらには試作車の開発にも携わっていました。その歴史と戦後の変遷について、詳細に見ていきましょう。

設立と役割

前身となる相模兵器製造所は昭和13年（1938年）に設立され、昭和15年（1940年）に相模陸軍造兵廠と改称されました。相模原駅北側から矢部駅北側に広がる現在のアメリカ軍相模総合補給廠の敷地、北東部の野積場を除いた部分が、かつての造兵廠の範囲にあたります。

その主な任務は、陸軍戦車の製造でした。車体本体の製造はもちろんのこと、各種部品の生産、そして新たな戦車の試作開発といった重要な役割を担っていました。製造された戦車は、日本陸軍の戦力維持に大きく貢献したと言えるでしょう。特に、97式中戦車や4式中戦車といった主力戦車の生産が盛んに行われていたと推測されます。大型イ号車といった試作戦車の開発にも携わっていた点は注目に値します。

施設と設備

造兵廠内には、戦車の製造に必要な様々な施設や設備が整えられていました。広大な敷地内には、製造工場、部品倉庫、そして試験施設などが配置され、効率的な生産体制が構築されていました。特筆すべきは、戦車道路と呼ばれるテストコースです。これは戦車の性能試験に使用された専用道路であり、現在は緑道として市民に親しまれています。この緑道は、往時の造兵廠の面影をしのばせる貴重な遺構と言えるでしょう。

組織と人員

造兵廠は、複数の課や製造所から構成される組織でした。庶務課、作業課、会計課といった一般的な部門に加え、戦車製造を担当する第1製造所と、弾薬製造を担当する第2製造所がありました。これらの部門には、多くの技術者や作業員が従事し、日夜、兵器生産に励んでいました。

廠長には中将や少将といった高官が着任し、組織運営や生産管理を統括していました。また、監督官も配置され、上層部からの指示や軍需計画に基づいた生産が行われていたと推測されます。これらの役職には、陸軍の中でも有能な人材が選抜されていたと考えられます。

戦後の変遷

第二次世界大戦の終戦後、相模陸軍造兵廠は接収され、アメリカ軍の施設となりました。現在ではアメリカ軍相模総合補給廠の一部として機能しています。敷地内には、かつての造兵廠の面影を留める建物や遺構も残されていますが、多くは米軍施設として利用されているか、解体されています。

しかし、戦車道路を改修した緑道や、陸軍造兵廠附属病院を前身とする総合相模更生病院などは、戦後の相模原市に貴重な遺産として残されています。これらの施設は、かつてこの地で兵器生産が行われていた歴史を今に伝えています。

まとめ

相模陸軍造兵廠は、日本陸軍の戦力維持に大きく貢献した兵器工場でした。戦車生産の中心地として重要な役割を果たした一方、その歴史は戦争という暗い影を背負っています。現在、その跡地には米軍施設や病院、緑道などが存在し、往時の面影を偲ばせる遺構は、歴史を学ぶ上で貴重な存在となっています。その歴史を理解することは、平和への希求を強める上で重要な一歩となるでしょう。

参考文献

外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年
『相模原市史』、『相模原市史 現代図録編』相模原市
* 福川秀樹 編著『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年

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