一来

一来（いちらい）について

一来は、仏教の教義において悟りの第二段階を示す重要な概念であり、四向四果のうちの一つです。この段階に達することで、修行者は更なる悟りへと進むことができます。

一来の意味と位置づけ

「一来」という言葉は、サンスクリット語である「sakadāgāmin」に由来し、これは「一度生まれたもの」を意味します。この段階に入ると、修行者は輪廻の中で一度天界に生を受け、その後再び人間界へと戻ることが定められています。これ以降、彼らは二度と輪廻を繰り返すことはありません。

知識の深化

原始仏教においては、一来の状態に達した者はすでに「三結」と呼ばれる障害、すなわち「有身見」（身体に対する固執）、「戒禁取見」（戒律に対する執着）、および「疑」（疑念）を破棄しています。さらに、修行者は三毒と呼ばれる「貪」（欲望）、「瞋」（怒り）、「癡」（無知）の状態も軽減されており、精神的な浄化が進んでいることが特徴です。

三毒の解説

• - 貪（とん）: 物質的・精神的な欲求が過度に強い状態。
• - 瞋（じん）: 他者に対する怒りや恨みの感情。
• - 癡（ち）: 知恵の欠如や誤解、混乱している状態。

倶舎論における一来

『倶舎論』では、一来向は欲界の修惑（情的煩悩）の前三品または四品を断じた者として位置づけられています。これは、彼らが情欲や一般的な欲望に対して優れた理解を持っていることを表しています。また、この段階で修行者は、「家家」とも称され、これは人界と天界の両方を行き来する存在であることを示唆します。

一来果は、欲界の前六品を断じた状態を指しており、より高次の状態へと誘う重要なステップです。

一来の意義と社会との関わり

仏教における一来の達成は、精神的な境地への進歩を示すものであり、これにより人々は様々な煩悩に対処する方法を学びます。この段階は、個人の内面の修行だけに留まらず、社会全体への影響も及ぼします。一来に至った人は、他者との関係性をより良いものにし、恵みのある行動をもって社会に寄与することが期待されます。

このように、一来は個人の精神的成長を促し、最終的には解脱へと導く重要な段階であるのです。

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