四向四果

四向四果（しこうしか）

四向四果とは、原始仏教や部派仏教において、修行者が悟りに至るための道のりを示す段階を指します。この考え方は、声聞（しょうぶん）と呼ばれる修行者によって教えられ、主要な段階としては、預流（よる）、一来（いちらい）、不還（ふげん）、阿羅漢（あらかん）という8つの段階が存在します。これらはまた、「四双八輩」とも称されることがあります。

向と果の定義

果とは、修行の最終段階で達成する境地を指し、一方で向は、その果に至るための各段階を示します。全体として、これらの4つの果を合わせて「四沙門果（ししゃもんか）」とも呼ばれます。特に、阿羅漢果に達することは、修行者にとっての最高の境地であり、それ以上の学びが必要ないとされています。このため、阿羅漢果を得た者は「無学」と呼ばれ、学び続ける必要のない存在とみなされます。一方で、四向四果の中で阿羅漢果未満の段階にいる者たちは「有学位」と区別されます。

四向四果の具体的な段階

以下が四向四果に含まれる各段階の詳細です。

1. 預流向（よるこう）
四聖諦を観察し、煩悩を断つ初期の段階です。この段階では欲界、色界、無色界の煩悩に苦しむことから解放されるための修行を行います。

2. 預流果（よるか）
預流向の修行を経て、煩悩を断ち切り地獄や餓鬼、畜生の道に堕ちることがなくなる状態を指します。

3. 一来向（いちらいこう）
一回生まれ変わって焉（けん）を得るために、さらなる修行を行います。六種の煩悩を断つことに焦点を当て、さらに四聖諦の理解を深めます。

4. 一来果（いちらいか）
六種の煩悩を完全に克服した状態で、欲界との関係が解消されます。

5. 不還向（ふげんこう）
欲界に戻ることなく、色界に向かって修行を続ける段階であり、残りの煩悩を克服することを目指します。

6. 不還果（ふげんか）
残りの三種の煩悩を断じ、色界に定着した状態です。

7. 阿羅漢向（あらかんこう）
不還果を得た聖者として、すべての煩悩を排除する修行を続ける段階です。

8. 阿羅漢果（あらかんか）
この段階では全ての煩悩を克服し、涅槃に至ります。再び生まれ変わらず、永遠の平安を得ることができます。

四向四果の成立と歴史

この四向四果の理論は、部派仏教のアビダルマ教学の時代に整えられたと考えられています。初期仏教における文献では、例えば『大般涅槃経』においても初期の一来、預流、不還の概念は提示されていましたが、四向四果の体系的な解釈とは異なる説明が見受けられました。

大乗仏教の『涅槃経』においては、声聞衆と凡夫が同列に扱われ、正しく依るべき人物像が示されています。これは、仏教の教えが深化する過程を象徴しており、聖者たちの理想的な姿を示すものでもあります。これにより、四向四果は単なる段階の集合に留まらず、修行者自身の成長や目指すべき方向性を示す重要な概念となっています。

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