一龍斎貞丈

一龍斎 貞丈の系譜とその功績

一龍斎 貞丈（いちりゅうさい ていじょう）は、長い伝統を誇る講談師の名跡です。元々は「昇龍斎 貞丈」という名で知られ、五代目以降は「一龍斎 貞丈」として親しまれています。この名跡は、代々の講談師たちに受け継がれ、各代の貢献が多大な影響を与えてきました。

初代から四代目の歴史

初代は真龍斎 貞丈で、後に四代目一龍斎 貞山となりました。二代目、三代目も同様に「真龍斎 貞丈」を名乗りましたが、四代目は本名を安原 大次郎とし、1889年から1931年まで活躍しました。彼は東京で生まれ、三代目の真龍斎 貞水の子として、また三代目の錦城斎 典山に入門することから講談の世界に入り、「貞一」と名乗りました。後に四代目昇龍斎 貞丈を襲名し、弟子に五代目一龍斎 貞丈を擁しました。

五代目 一龍斎 貞丈の歩み

五代目の一龍斎 貞丈（1906年8月13日 - 1968年7月27日）は、三重県に生まれ、本名を柳下 政雄といいます。彼は早稲田実業に通っている間に講談に魅了され、1925年には四代目昇龍斎 貞丈の元で修行を開始しました。1930年4月には真打に昇進し、その後すぐ師匠の急逝を受けて六代目一龍斎 貞山の預かり弟子になりました。1932年には「五代目一龍斎 貞丈」を名乗り、また屋号を「昇龍斎」から「一龍斎」に変更しました。この変更は、当時、落語協会の会長を務めていた貞山に倣ったものとされています。

彼は数多くの新作を発表し、1952年にはもく星号墜落事故の際、搭乗予定でありながら遅れたために命を救われた逸話があります。また、女性に非常に人気があり、彼の人生は波乱に満ちていました。1968年に脳溢血で亡くなり、その墓所は墨田区の西光寺にあります。

六代目 一龍斎 貞丈の登場

六代目一龍斎 貞丈（1928年9月2日 - 2003年10月1日）は、神奈川県横浜市で五代目の子として誕生しました。法政大学商学科を卒業し、1947年に父のもとに入門し「四代目一龍斎 貞花」と名乗ることから始まりました。1951年には二ツ目に昇進し、1957年には真打に昇進。1969年には「六代目一龍斎 貞丈」を襲名しました。

彼は講談協会の会長を務めた功績があり、作品の発表や講談界への貢献は多岐にわたりました。2003年に急性心不全で亡くなるまで、彼の業績は高く評価され、多くのファンに愛され続けました。

弟子と家族

五代目一龍斎 貞丈は、多くの弟子を育て上げましたが、主な弟子には一龍斎 貞鳳、六代目一龍斎 貞丈、六代目一龍斎 貞水などがいます。また、同時期の講釈師、五代目宝井馬琴は彼の従兄弟であり、実弟には初代山遊亭金太郎という落語家がいます。

一龍斎 貞丈はその芸術的な才能と、家族に渡る文化的背景を持ち合わせた偉大な講談師でした。その足跡は、今もなお講談界で語り継がれています。

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