丁璉

丁璉（ディン・リエン）

丁璉（ディン・リエン、ベトナム語：Đinh Liễn / 丁璉、生年不詳 - 太平10年（979年）10月）は、丁朝大瞿越（ダイコベト）の皇族であり、丁匡璉（ディン・クオン・リエン、ベトナム語：Đinh Khuông Liễn / 丁匡璉）とも呼ばれています。

生涯

丁璉は、初代皇帝である丁部領（ディン・ボ・リン）の長男として生まれました。951年、呉朝の天策王（ゴ・スアット）呉昌岌（ゴ・スオン・カップ）と南晋王（ナンタン）呉昌文（ゴ・スオン・バン）が丁部領の根拠地である華閭洞（ホアルー）に攻め込んできた際、丁部領はこれを恐れ、丁璉を人質として差し出しました。丁璉は古螺（コロ）に留め置かれることになります。

丁部領が呉朝に従属しなかったため、呉朝は再び攻め込んできましたが、丁部領の守りは堅く、1ヶ月もの間、攻略できませんでした。呉朝の使者は丁璉を竿の上に吊るし上げ、「降伏しなければ丁璉を殺す」と脅迫しました。しかし、これに激怒した丁部領は、逆に多くの矢を射かけるよう命じました。この事態に驚いた呉朝の両王は、丁璉を殺害することを諦め、兵を引きました。965年に呉昌文が戦死すると、丁璉は華閭に戻りました。

969年閏5月、丁璉は南越王（ナンベト・ブオン）に封じられました。972年、父である丁部領の命を受け、宋への使者として赴き、冊封を求めました。翌973年、宋の太祖（趙匡胤）は丁部領を交趾郡王（こうちぐんおう）に封じ、丁璉もまた検校太師（けんこうたいし）、静海軍節度使（せいがいぐんせつどし）、安南都護（あんなんとご）に封じられました。

978年、丁部領が幼い弟である丁項郎（ディン・ホン・ラン）を皇太子に立てたため、長年丁部領と苦楽を共にしてきた丁璉はこれに不満を抱きました。翌979年春、丁璉は密かに手下の者を使って丁項郎を殺害させました。しかし、同年10月、丁璉自身もまた、父である丁部領と共に、祗候内人（しこうないじん）の杜釈（ド・タク）によって殺害されるという悲劇的な結末を迎えました。

丁璉の生涯は、権力争いと裏切りに満ちたものであり、その死は丁朝の衰退を暗示するものとなりました。

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