万力

万力：挟んで固定する多様な工具

万力とは、2つの口金で対象物を挟み込み、固定する工具です。英語ではバイス（viseまたはvice）と呼ばれ、加工、組立、修理など、幅広い作業で活用されています。素材をしっかりと固定することで、切削、研磨、接着、ネジ締めといった作業を安全かつ効率的に行えます。

万力の種類と特徴

万力は、その用途や構造によって様々な種類があります。代表的なものを以下に紹介します。

1. 横万力 (Bench Vise)

最も一般的な万力です。作業台に固定して使用し、工場などでは必需品となっています。口金のサイズは75mm、100mm、125mm、150mmなどが一般的です。口金は交換可能で、加工物への傷防止のため、銅板やアルミ板などを挟んで使用することもあります。角胴形と丸胴形があり、丸胴形の方が精度が高いのが特徴です。

2. マシンバイス (Machine Vise)

工作機械に取り付けて使用する万力です。フライス盤用（M形）と形削り盤用（S形）があり、M形の方が精度と締付力に優れています。S形は旋回台がついているため、様々な角度からの加工が可能です。JIS規格で精度が厳密に定められています。

3. スーパーバイス

大型加工物を工作機械のテーブルに直接固定するために使用します。固定側と移動口金側が分離しているため、大きなワークにも対応できます。

4. ベタバイス

ボール盤での加工物保持に用いられます。コンパクトな設計で、ボール盤作業を効率化します。

5. ヤンキーバイス

底面と側面が直角になっているボール盤用バイスです。加工物を挟んだまま90度回転させることで、直角方向への穴あけも可能です。

6. アングルバイス

水平方向、上下方向に角度調整が可能なバイスです。多様な角度からの加工を可能にします。

7. 精密バイス

平面研削盤で使用される高精度のバイスです。下面と側面の直角度が正確に保たれており、複数回90度回転させることで、加工物の六面全てを高精度に研削できます。

8. サインバイス

万力とサインバーを組み合わせたバイスです。複雑な角度での加工に便利です。

9. 立万力 (Leg Vise)

全体が立形になっており、床に固定して使用します。挟み部は旋回式で、強力な締付力を実現しています。丈夫な作りで、過酷な作業にも耐えます。

10. 取付万力 (Bench Vise)

作業台に取り付けて使用する、家庭工作向けの小型バイスです。

11. 手万力

手に持って使用する小型の万力です。細かい作業に適しています。

12. バイスグリップ (Locking Pliers)

プライヤーの一種で、対象物を強力に掴んで固定できます。

13. シャコ万力

バーコ形とC形があり、口幅でサイズが決まります。鍛造品で強度が高く、締付ネジの先端は自在首になっているため、斜め方向からの挟み込みも可能です。

14. パイプ万力 (Pipe Vise)

パイプ加工専用の万力で、水道・ガス配管工事などで使用されます。V字型の口金でパイプをしっかりと固定し、切断や継手締め付け作業を容易にします。

15. テーブルバイス

机に取り付けて使用する小型の万力です。机への傷防止のため、当て木を使用することが一般的です。

万力の選び方

万力を選ぶ際には、以下の点を考慮する必要があります。

用途: どんな作業に使用するのか
サイズ: 挟む対象物の大きさ
締め付け力: 必要な保持力
材質: 耐久性、耐摩耗性
精度: 精密な作業には高精度な万力が必要

適切な万力を選ぶことで、作業効率の向上と安全性の確保につながります。

関連工具

クランプ：複数の対象物をまとめて固定する工具。万力とは固定方法や用途が異なります。
* バイスドリル：万力でドリルビットを挟んで回転させる装置。

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