万寿地震

万寿地震について

万寿地震（まんじゅじしん）は、平安時代の1026年に、山陰地方の石見国で発生したとされる地震及びその後の津波のことを指します。この地震は「万寿の大津波」とも呼ばれ、従来の地震史や津波史には記載がなく、そのため信憑性について疑問が持たれてきました。しかし、最近の史料収集や水中考古学の調査が進み、その存在が徐々に浮かび上がっています。

地震と津波の記録

歴史的な記録として、郷土史家矢富熊一郎の著書『柿本人麻呂と鴨山』が挙げられます。この中では、万寿3年5月23日の夜、高津沖の石見潟で大きな地鳴りが起こり、鴨島が水中に沈んだと記されています。また、津波は特に高津川河口付近に甚大な被害をもたらし、河口から約16km離れた地点までも影響を与えたとされます。この津波によって、五福寺を含む多くの寺社が壊滅的な打撃を受け、事実上の廃寺となったと伝えられています。

津波の影響は、現代の地名にも反映されています。島根県の大田市から益田市にかけて、津波による伝承が残されており、地名には「小鯛ヶ迫」や「舟超坂」、「鯨坂」などが見られ、これらは当時の津波による影響を示唆する証拠とされます。『石見八重葎』には、古い時代における津波の規模が記録されており、江津市では民家や寺社が数百軒打ち崩されたと記されています。

また、益田市遠田では大津波により、神社が倒壊し、周囲の土地が洗われたという記録もあります。このように、万寿地震の影響は、津波による被害が多岐にわたることを示しています。各地の津波到達点の推定も行われており、研究者たちは津波の高さを推測しています。

調査と研究の進行

研究が進む中で、万寿地震や津波の影響を受けた地域には、沈没した島の伝説が語り継がれています。701年の大宝地震や1771年の八重山地震など、他の地震とも関連づけられ、これらの地震と比較すると、万寿地震の規模はM = 7.5から7.8程度と考えられています。特に、益田沖が震源である可能性があります。

周布・長浜・浜田エリアでは津波の伝承がほとんど確認されず、そのため東西の地域における地殻の動きが異なることが指摘されています。特に、浜田付近は隆起、周囲は沈降しているとされる地殻変動パターンが似ていることから、地域特有の地震活動が考えられています。

さらに、益田平野ではトレンチ調査が行われ、津波による堆積物が見つかりました。これらの堆積物の年代測定から、万寿津波が実際に発生したことが証明されています。大瀬の海底調査では、鴨島の跡が探られ、島としての痕跡が存在する可能性が考察されていますが、確定的な証拠には至っていません。

まとめ

万寿地震はその記録が薄く、長い間、研究が遅れていましたが、最近の調査によりその存在が再評価されています。津波の規模や影響についての研究が進む中で、当時の地域に与えた影響を理解する手がかりが増えてきました。今後の研究によって、さらに詳細な情報が解明されることが期待されています。

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