万里集九

万里集九とは

万里集九（ばんりしゅうく）は、室町時代中期に活躍した禅僧であり、歌人としても知られています。1428年に近江国で生まれ、没年は不明です。俗姓は速水氏で、道号である「万里」と、諱である「集九」を名乗りました。「集」の字は、彼が属していた一山派の法系を示すものです。

生涯

近江国浅井郡速水郷をルーツとする速水氏の出身で、幼少期を近江で過ごしたと考えられています。1442年頃に上京し、叔父である梅西が住職を務める京都東福寺の塔頭永明院に身を寄せ、僧となりました。その後、京都相国寺雲頂院で修行を積み、一山派の大圭宗价に師事。大圭から「集九」の名を与えられました。また、建仁寺や南禅寺の講席、蔭涼軒主季瓊真蘂にも師事し、禅僧としての教養を深めています。

1463年には相国寺の友社に入り、横川景三や桃源瑞仙らと交流。相国寺時代には、奈良、宇治、須磨、明石などを訪れ、詩作活動を行いました。1467年に応仁の乱が勃発すると、相国寺も戦火に見舞われましたが、万里はそれ以前に都を離れ、近江の浄行院などに移りました。その後、鷗隣斎に仮寓した後、近江坂田郡大原荘内の正伝庵に移り住んでいます。

地方では還俗し、1471年には美濃国禅源寺に住み、斎藤妙椿と親交を深めました。1473年には長男の千里、1477年には次男の百里が誕生しています。その後、尾張国、三河国へと移り住み、1485年には太田道灌に招かれて江戸城に滞在しました。翌年、道灌が上杉定正によって暗殺されると、しばらくは定正に留め置かれますが、後に定正に追われた道灌の子太田資康を見舞っています。1507年頃に亡くなったと考えられています。

文化人としての活動

万里集九は、禅僧としての活動だけでなく、歌人、文化人としても活躍しました。著作には『静勝軒記』や、漢詩文集の東国旅行記『梅花無尽蔵』があります。『梅花無尽蔵』は7巻からなり、1506年に完成したとされています。

また、彼は有馬温泉、草津温泉、下呂温泉を「三名泉」と定め、後の江戸時代に林羅山もこれらの温泉を「天下の三名泉」と評価しました。現在、下呂温泉で開催される下呂温泉まつりの参進行列は、「温泉感謝祭（万里集九祭・林羅山祭）」として開催されており、彼の功績が現代にも伝えられています。

万里集九は、その多才な才能と行動力によって、室町時代の文化に大きな足跡を残しました。禅僧としての厳格さと、歌人としての繊細さを併せ持つ彼の人物像は、現代においても多くの人々に感銘を与え続けています。

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