三つ数えろ

ハワード・ホークス監督によるフィルム・ノワール傑作『三つ数えろ』

1946年公開のアメリカ映画『三つ数えろ』(原題:The Big Sleep)は、数あるフィルム・ノワールの中でも傑作として名高い作品です。監督は巨匠ハワード・ホークス、主演はハンフリー・ボガートとローレン・バコールという豪華キャストを迎え、レイモンド・チャンドラーの小説『大いなる眠り』を映画化しました。複雑で入り組んだプロット、魅力的なキャラクター、そして時代を感じさせる独特の雰囲気は、多くの観客を魅了し続けています。1997年にはアメリカ国立フィルム登録簿にも登録されており、その高い芸術性と文化的意義が認められています。

複雑に絡み合う事件

物語は、第二次世界大戦後のロサンゼルスを舞台に展開します。私立探偵フィリップ・マーロウ（ハンフリー・ボガート）は、スターンウッド将軍から依頼を受けます。将軍の娘であるヴィヴィアンとカルメンの姉妹は、老いた父親を悩ませる存在。将軍は、カルメンを脅迫する古書店主ガイガーの件を依頼します。しかし、将軍の用心棒リーガンは失踪しており、さらに運転手も姿を消しています。

マーロウの調査は、古書店街、そしてラバーン・テラスの一軒家へと及びます。そこで彼は、ガイガーの射殺死体と、酩酊状態のカルメンを発見します。現場からは重要な証拠が持ち去られており、状況はさらに複雑さを増していきます。

その後も、新たな脅迫者ブローディが登場し、事件はさらに混沌を極めます。マーロウは、様々な人物と接触し、巧みな推理と危険な行動で真相へと迫っていきます。ヴィヴィアンとの複雑な関係も、物語に深みを与えています。

謎解きの連続と衝撃の結末

マーロウは、次々と起こる事件の謎を解き明かしていきます。消えた用心棒リーガン、殺された脅迫者たち、そして、ヴィヴィアンとマースの関係など、様々な謎が絡み合い、緊張感あふれる展開が続きます。

クライマックスでは、マーロウはマースとの直接対決に挑みます。マースの策略、ヴィヴィアンの隠された真実、そしてリーガンの死の真相などが明らかになり、事件の全貌が明らかになります。

事件の黒幕は、実はマースであることが判明します。彼はリーガンを殺害し、その死体を隠匿、ヴィヴィアンを脅迫して金銭を巻き上げていました。ガイガーやブローディも、スターンウッド家の資産を狙っていたのです。

マーロウは、自身の機転と大胆な行動でマースを追い詰めます。そして、事件の真相を警察に報告、すべての謎を解き明かします。

作品の評価と補足情報

『三つ数えろ』は、Rotten Tomatoesで97％の高評価を獲得し、批評家から絶賛されています。複雑なプロット、巧みな演出、そしてボガートとバコールの素晴らしい演技が、高く評価されています。

映画には、1945年版と1946年版の2種類が存在します。現在ではパブリックドメインとなっており、入手も容易です。

原作小説の作者レイモンド・チャンドラーは、当初ボガートのキャスティングに反対したという逸話も残っています。これは、ボガートの身長が、チャンドラーがイメージしていたマーロウ像よりも低かったためです。

また、映画の中で重要な役割を果たす「テーラーの死」については、原作でも死因が不明瞭であるため、ホークス監督はチャンドラーに問い合わせたものの、明確な答えを得られなかったというエピソードも知られています。

ローレン・バコール演じるヴィヴィアンは、ハワード・ホークス監督が好んだ女性像を体現しているとも言われています。

『三つ数えろ』は、複雑なプロットと魅力的なキャラクター、そして衝撃の結末を持つ、フィルム・ノワール史上に残る名作です。その高い評価は、現代においても色褪せることがありません。

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