三つ首塔

三つ首塔

『三つ首塔』は、1955年に横溝正史が発表した長編推理小説であり、金田一耕助シリーズの一つです。1955年に『小説倶楽部』に連載された本作は、独自の構成とユニークなキャラクターにより、読者を惹きつけ続けています。また、本作を基にした映画やテレビドラマも数多く制作され、幅広いメディアで親しまれています。

概要

本作は、ヒロインの音禰が自己の回想を通じて語る形をとり、金田一耕助の登場は控えめです。合理的解決を重視する横溝作品の中では、やや異色なエンディングを迎えます。この点について、横溝は原稿のボリュームに制約があり、最終的には合理的な結末が描けなかったと説明しています。また、横溝自身の自選によるベスト10の8位に位置づけていますが、その順位は販売部数の影響を受けているとも言及しています。

『幽霊男』『吸血蛾』『悪魔の寵児』などと同様に、扇情的な描写が含まれていますが、地域性を持つタイトルに関連した色合いもあり、複雑な構成によって、他の通俗長編とは一線を画しています。このため、ファンの間では特別な評価を受けていることが多いです。

ストーリー

物語は、13歳で両親を失った宮本音禰が、伯父の上杉誠也に引き取られるところから始まります。音禰は、遠縁の佐竹玄蔵老人から巨額の遺産を相続するために、見知らぬ男性・高頭俊作と結婚することが条件として提示されます。この知らせを受けた音禰の運命は一変します。

そして、上杉伯父の還暦祝いの夜に、連続殺人事件が勃発します。この事件は、玄蔵老人が自身の過去に関わる事件と深い関係があり、彼の供養塔「三つ首塔」に根ざしていました。事件は、〇〇の首を供養するために建てられた塔から始まったのです。

登場人物

物語には多彩なキャラクターが登場し、金田一耕助や警視庁警部の等々力大志をはじめ、音禰自身や玄蔵を含む佐竹家の人々がそれぞれの思惑を抱えています。音禰は百億円の遺産を巡る争いに巻き込まれ、さまざまな人間関係の中で生き抜くことを強いられます。

本作は、推理小説としての要素とともに、登場人物の背景や人間関係が複雑に絡み合っており、読者はその中で真実を見つけ出す楽しさを味わうことができます。

映画とテレビドラマ

本作は、1956年に映画化され、さらには1972年、1977年、1988年、1993年といった時期にそれぞれ異なるテレビドラマ版が制作されています。ドラマ版では原作からの変更や独自の解釈が加えられており、オリジナルなストーリー展開が見られます。

『三つ首塔』は、推理ファンや横溝作品の愛好者に長年親しまれている名作で、幅広くアダプテーションが行われていることからも、その人気と影響力が伺えます。

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