三ノ輪事件

三ノ輪事件：警官の発砲が招いた悲劇

1964年（昭和39年）8月2日、東京都台東区三ノ輪で、一人の市民が警察官の発砲によって命を落とすという痛ましい事件が発生しました。この事件は、戦後初めて警察官の発砲が一般市民の死亡につながった事例として、社会に大きな衝撃を与えました。

事件発生

事件当日、午後5時50分頃、台東区三ノ輪の大関横丁交差点近くの商店街で、サングラスをかけ、日本刀を所持して歩く男が、交番前で立番中の警察官に発見されました。警察官は男を交番に呼び入れましたが、男は銃刀法違反での逮捕を悟り、日本刀を手に逃走しました。

警察官2名が追跡し、地下鉄三ノ輪駅近くで男に追いつき、取り押さえようとしました。男は刀を抜き、「やるか!!」と叫びながら警察官に襲いかかりました。警察官は「抵抗をやめろ」と警告し、威嚇のために2発発砲しましたが、男は警察官の頭部をめがけて切りつけました。警察官は数回かわしましたが、最終的には警帽の上から頭を切られました。


もう一人の警察官は、男に向けて2発発砲し、男の右脇下と左尻に命中しました。頭部を負傷した警察官も、残りの弾丸3発を全て発砲し、うち2発が男の左脇腹とみぞおちに命中しました。男は即死しました。しかし、警察官が発砲した弾丸のうち1発が、男から外れて近くにいた靴職人の男性の頭部に命中してしまいました。男性は病院に搬送されましたが、同日の夜8時過ぎに死亡しました。

事件後

この事件は、警察官の発砲により無関係の市民が死亡するという、戦後初の事態として大きく報道されました。その後の検死の結果、犯人の死因はみぞおちに命中した弾丸によるものと判明しました。また、死亡した靴職人の男性の頭部には、左眉上から側頭部にかけて弾丸が貫通した痕跡がありました。

犯人は指紋などから、三重県出身の元工員で、前年に傷害罪で逮捕されていたことが判明しました。


三ノ輪事件は、警察官の職務執行における武器の使用、そしてその結果としての市民の死という重い現実を突きつけ、社会に深い爪痕を残しました。

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