三上於菟吉

三上於菟吉の生涯と作品

三上於菟吉（みかみ おときち）は、1891年2月4日に埼玉県中葛飾郡桜井村（現・春日部市）に生まれました。彼は大正・昭和時代の著名な小説家であり、文壇の寵児と称されました。象徴的な作品に『雪之丞変化』があり、彼の作風は「日本のバルザック」とも評されています。

経歴と出発点

彼の家族は代々儒医を営んでおり、祖父は漢詩の詩人でもありました。三上は旧制粕壁中学校を卒業後、早稲田大学の英文科に入学します。在学中、広津和郎や谷崎精二といった著名な作家たちと交流し、ロシア文学にも傾倒しました。1912年には同人誌『しれねえ』を創刊しましたが、彼の作品「薤露歌」が発禁になってしまい、短命に終わりました。

父の厳しい教育により一度は退学となり、実家での謹慎生活中に短編小説などを発表しました。1915年には長篇小説『春光の下に - 又はゼ・ボヘミアン・ハウスの人々』を自費出版しますが、これも発禁処分を受けました。しかしこの作品を通じて、その後の作家生活が始まるきっかけとなりました。

主な作品とスタイル

1921年に『時事新報』で発表した「白鬼」は虚無的な青年の遍歴を描いた作品で、これが彼の名を広める一因となりました。1925年からは時代小説にも取り組み、特に『敵討日月双紙』は彼の時代小説としての名声を決定づけました。1934年から連載された『雪之丞変化』は代表作となり、映画化もされるなど幅広い人気を誇りました。

三上の作品はその筋立てや文体の斬新さで知られ、心理描写や社会の各層の描写に力を入れました。特に、ニヒリズムや人間関係の深い描写は多くの読み手に支持されました。また、彼は多様なペンネームを用いることで、さまざまなジャンルに挑戦しました。

人間関係と私生活

長谷川時雨は三上の内縁の妻であり、彼女は三上を作家として世に送り出すために多くの支援をしました。三上の放蕩生活を心配しつつも、彼を理解し、最終的には彼の作家活動を共に支えていきました。時雨は作家としても成功を収めており、彼女の存在は三上にとって重要な支えとなりました。

1935年には『雪之丞変化』の影響で著名な作家となりましたが、彼の生活は散発的なもので、作品の多くは待合で執筆されたとされています。三上は晩年まで活発に執筆を続けましたが、1936年に突然倒れ、以降は健康を害しながらの生活を送ることになります。

死去と遺産

1944年に血栓症の悪化により亡くなり、春日部に埋葬されました。彼の作品は今も多くの読者に愛され続けており、『雪之丞変化』は特に有名です。映画化された作品も数多く、この物語は大衆演劇の中でも評判となり、今なお多くの人々に親しまれています。

彼の人生は波乱に満ちたものでしたが、その文学は現代においても多くの人々にインスピレーションを与えています。三上於菟吉は、日本文学の重要な一端を担った作家として、今後も記憶されるべき存在です。

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