三代目薬屋久兵衛

三代目薬屋久兵衛

『三代目薬屋久兵衛』（さんだいめくすりやきゅうべえ）は、漫画家ねむようこが祥伝社の雑誌『FEEL YOUNG』に2014年9月号から2017年1月号まで連載した漫画作品です。単行本は同社から全5巻が刊行されています。

あらすじ

物語の主人公は、短い結婚生活に終止符を打ち、故郷へ戻ってきた女性・三久（みく）。彼女は、代々続く実家の漢方薬局「薬屋久兵衛」の三代目を継ぐべく、祖父のもとで修行に励んでいます。

そんな彼女が出会ったのは、祖父・久蔵の友人である大学教授・猶原（このはら）の教え子である叶（かなえ）でした。人見知りで植物をこよなく愛する叶と、素直で人を信じやすい三久は、次第に互いに惹かれ合います。叶もまた、三久に対して特別な感情を抱くようになります。

しかし、三久の心には、中学時代に転校する際に別れを告げた初恋の相手、アキトとの間で交わした「結婚の約束」が強く残っていました。彼女は、その約束を果たすことこそが、自分の歩むべき正しい道だと固く信じ込んでいます。そのため、叶との間に芽生えた淡い恋心や、叶からの好意に対しても、その感情に背を向け、向き合おうとしない選択をしてしまうのです。過去の約束に縛られ、現在の感情に蓋をしようとする三久の葛藤を中心に、物語は進行していきます。

主な登場人物

三久（みく）: 25歳。本作の主人公。実家の漢方薬局「薬屋久兵衛」の三代目となるため修行中。大学卒業後一度結婚しますが、短期間で離婚し故郷へ戻ってきました。素直で人を信じやすい性格です。
久蔵（きゅうぞう）: 三久の祖父。「薬屋久兵衛」の二代目当主。問診と称しては頻繁に麻雀に興じるなど、飄々とした人物です。
菊乃（きくの）: 三久の祖母。三久は祖母が亡くなったと聞かされていましたが、実際は久蔵の浮気に対する怒りと失望から別居している状態でした。地元の子供たちの間で囁かれる都市伝説「森の魔女」の正体とされています。
青柳 叶（かなえ）: 貝桜大学で薬用植物学を学ぶ学生。猶原教授の教え子です。極度の人見知りですが、植物に対しては深い愛情を持っています。血を見るのが苦手。薬剤師の資格を所持しており、久蔵や菊乃からは三久の婿候補として期待されます。
猶原（このはら）: 貝桜大学の薬用植物学教授。久蔵や菊乃とは学生時代からの旧友です。
アキト: 三久の中学時代の同級生で、初恋の相手。転校前に三久と結婚の約束を交わしました。

他にも、三久の中学時代の同級生でバーを経営するらいむや、プードル専門のトリマーである河合、らいむの店で働く奈美などが登場し、物語に彩りを添えています。

作品の特徴

本作は、故郷という閉じたコミュニティの中での人間関係や、過去の経験が現在の恋愛や人生観にどう影響を与えるか、といったテーマを掘り下げています。漢方薬局という伝統的な舞台設定も、物語に独特の雰囲気を与えています。三久が、過去の自分自身と向き合い、本当に大切なものが何かを見出していく過程が丁寧に描かれた作品です。

書誌情報については、祥伝社〈フィールコミックス〉より全5巻が刊行されています。

1. 2015年3月7日発売、ISBN 978-4-396-76632-0
2. 2015年9月8日発売、ISBN 978-4-396-76654-2
3. 2016年3月8日発売、ISBN 978-4-396-76667-2
4. 2016年9月8日発売、ISBN 978-4-396-76680-1
5. 2017年3月8日発売、ISBN 978-4-396-76699-3

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