三代相論

三代相論の考察

三代相論（さんだいそうろん）は、1267年から約50年にわたり、曹洞宗内で生じた宗門対立の総称です。この時期は、開祖道元の教えを重んじる保守派と、民衆への教化を重視する改革派との間で、さまざまな論争が繰り広げられました。特に義介と義演の間での対立が中心であり、彼らの意見の相違によって曹洞宗の未来が大きく分かれることになりました。

第1期

道元が亡くなった後、孤雲懐奘が曹洞宗の第2祖として永平寺の住職を引き継ぎました。懐奘は温厚な性格で、当時の僧団内で対立が表面化することを防いでいました。彼は道元の教えを忠実に守りながら、永平寺の施設や規則の整備を進めるなど、寺の運営に奔走しました。しかし、1267年に懐奘が退任を決意した際、後任に義介と義演のどちらを選ぶかで激しい対立が生じました。最終的に義介が後任となりましたが、その急速な改革に反発する声が多く、1272年には義介が退任せざるを得なくなりました。

第2期

義介の退任後、懐奘が再任しますが、弘安3年に入寂。再び後任問題が生じ、保守派から適任者が見つからず、懐奘の遺志を受けて義介が再入寺することとなります。義介は、自ら定めた規則を原点に戻し、対立を避けようと努めましたが、対立は深刻化し、結局、義介は1287年に永平寺を下り、加賀の大乗寺に移ることになりました。この移転により、道元の教えを受け継ぐ弟子たちもそれに従い、曹洞宗は永平寺と大乗寺の二つに分かれる事態となりました。

第3期

義介の下山後、義演が新たに永平寺住職となりましたが、寺の状況は厳しく、義演は開基波多野氏の信頼を得られずに寺勢が衰退する結果となります。その後、義演も退任し、小庵で隠居します。永平寺は一時的に無住状態となり、1314年に義演が入寂することで再び世代問題が浮上しました。義介を3世として数えるべきか否かの議論が起こり、最終的に義介が正式に認められる形でこの論争は決着がついたものの、その過程で義介に与えられていた「中興」の称号は返上されました。

備考

義介や義演は共に日本達磨宗に属していますが、三代相論の対立は必ずしも道元直系と日本達磨宗派の争いとは言えません。特に、義演が義介を非難する際に、懐奘から道元と日本達磨宗との法統が重なっている点を指摘していることから、究極的には両派の思想対立が根底にあると考えられています。

関係論文

• - CiNii: 三代相論
• - 村上聖尚「永平寺三代相論について」『駒澤史学』第16巻、駒澤大学、1969年4月、59-80頁、NAID 110007002277。

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