孤雲懐奘

孤雲懐奘の生涯

孤雲懐奘（こうん えじょう、または懐弉とも呼ばれる）は、建久9年（1198年）から弘安3年8月24日（1280年9月19日）まで生きた、鎌倉時代の著名な禅宗僧です。彼は曹洞宗の第2祖であり、永平寺の第2世としても知られています。その教えと影響は、今も僧侶たちによって受け継がれています。

幼少期と出家の経緯

懐奘は、九条為通の子として京都で生まれました。幼少期から比叡山に通い、18歳で出家し、天台宗の僧となりますが、その学識は将来を嘱望されるほど優れていました。しかし、彼の母親から「学問だけに専念するのではなく、衆生を救うために行動しなさい」という教えを受け、下山する決心をしました。

24歳になった彼は浄土宗西山派の証空から浄土教学を学びますが、依然として信に足りず、26歳の時に大和国の多武峯で日本達磨宗の覚晏を訪問し、禅を学ぶことを選択します。そこで懐奘は覚晏に印可され、高弟としての地位を得ます。

道元との出会い

安貞2年（1228年）、興福寺の焼き討ちに遭い避難する中、宋から帰った道元の教えの評判を耳にし、彼に法戦を挑むことになります。この法戦の結果、道元の優れた教えに感服し、師事を申し込むものの、道元は仮寓の身であったため断られます。その後、文暦元年（1234年）に道元の元で修行を始める許可を得て、彼の教えを受けるようになりました。

嘉禎元年（1235年）に道元から菩戒を受け、その後近江国興聖寺の首座に任じられました。懐奘は道元の教えを記録し広めることに尽力しました。

著作と影響

懐奘の著書には、道元の著作『正法眼蔵』の整理・筆写が含まれ、この作品は今日の禅僧にとって貴重な資料です。嘉禎3年（1237年）には、道元の言葉をまとめた『正法眼蔵随聞記』を執筆し、これは道元の人柄や当時の禅僧の教えを知る重要な文献とされています。さらに、懐奘は『光明蔵三昧』を書くなど 、優れた禅文学として評価されています。

仁治2年（1241年）には、数十人の日本達磨宗の僧が道元の弟子になる際、懐奘が果たした役割も推測されます。

永平寺の住職とその後

建長5年（1253年）に道元が亡くなった際、懐奘は永平寺の2世となり、教えの後継者としての責任を担います。この時、保守派と開放派の対立があったため、彼はその調停に尽力しました。文永4年（1267年）4月には住職を徹通義介に譲りますが、その後の議論に再び関わることになります。最終的に、文永9年（1272年）に再任され、道元の侍者としての立場を貫きました。

彼は自らの遺言において、自分の遺骨を道元の墓所のそばに埋葬し、毎年道元の忌日に供養を行うようにと求めました。

最期と遺産

弘安3年8月24日（1280年9月19日）に亡くなった懐奘は、生前特別な法要を避けるよう求め、道元の法要に参加できることを望みました。そのため、彼の願いは叶えられました。

1930年には昭和天皇より道光普照国師の国師号を授与され、禅宗界においてその名声が一層高まりました。

番外編：永平寺の慣習

永平寺の承陽殿では、懐奘が道元の廟所を見守っていると信じられ、扉を少し開けておく慣習が今も続いています。また、彼と遭遇しないように、夜中の役寮点検の時間も工夫されています。

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