日本達磨宗

日本達磨宗の概要

日本達磨宗（にほん だるましゅう）は、平安時代末期から鎌倉時代初期に活動した僧侶、大日房能忍によって創始された禅宗の一派です。能忍は初めて天台宗を学んだものの、自らの修行を通じて禅に関する書籍を読み解き、無師独悟の境地に達しました。その結果、摂津国（現在の大阪府）の三宝寺を拠点に布教活動を始めました。

達磨宗の名称は、聖徳太子が達磨大師と出会った伝説に由来しており、日本書紀や元亨釈書に記載されています。「日本達磨宗」という呼称は、近世の研究者によって使われるようになったもので、能忍が活動していた当時は単に「達磨宗」と呼ばれていました。

能忍の禅とその評価

能忍が実践した無師の禅は、伝統的な禅宗の法統に従う師弟相承の考え方と異なり、当時の禅堂では革新的と受け取られました。特に、密教に根ざした現世利益を重視する公家の文化背景では、修行を通じた悟りを求める禅の宗風は受け入れられることが少なく、因果的に布教は困難に直面しました。

彼の禅に対する評価は必ずしも好意的ではなく、同時代の和歌の新風を生み出していた藤原定家などからも「新儀非拠の達磨歌」という揶揄が寄せられました。しかし、時間が経つにつれ、拙庵徳光が能忍の禅境を認めると、彼の名声は次第に高まりました。これを受けて能忍は、栄西らと共に京で布教を試みましたが、比叡山の一派からの阻害を受け、最終的には不慮の事故で急逝しました。

能忍の没後の展開

能忍が亡くなった後、彼の弟子である東山覚晏が教団を継承し、さらに懐奘といった門弟と共に活動を展開しました。最初は大和国（現在の奈良県）の多武峰を拠点としていましたが、南都興福寺の信者による焼き討ちに遭い、越前国（福井県）へと逃れました。この地では、波著寺を本拠にして活動を続けました。

覚晏の死後、懐奘が教団を引き継ぎ、1241年には道元の下で活動していた門弟たちも参じました。一時期、達磨宗は曹洞宗に吸収され、存続が危ぶまれましたが、近年の研究により、三宝寺として続く独自の流れがあり、覚晏系統が傍流であることが示唆されています。これにより、達磨宗は中世末まで存在を保っていたことが確認されています。

結論

日本達磨宗は、能忍の生前やその後も影響を与え続け、独自の禅宗の一派としての位置を確立しました。その歴史は、当時の公家社会や他の宗派との関わりの中で形成されたものであり、今もなお興味深い研究対象となっています。

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