三岐鉄道モハ150形電車

三岐鉄道モハ150形電車

三岐鉄道モハ150形電車は、かつて三岐鉄道三岐線で活躍した通勤形電車です。輸送力増強と老朽化した旧型車両の置き換えを目的として、1972年から1975年にかけて計4両が導入されました。この4両は、新製車両であるモハ150・151と、相模鉄道（相鉄）2000系電車の車体を流用したモハ155・156に大別されます。いずれも両妻面貫通型・片側3扉構造の両運転台仕様でしたが、外観は大きく異なっていました。なお、モハ152 - 154は欠番とされました。

主要機器は4両とも共通の部品を使用しており、その多くは西武鉄道で廃車となった311系・371系電車の解体発生品が再利用されました。導入当初は増結用として使用され、後に西武鉄道から譲り受けた501系、601系などの大型車両が主力になると、日中の閑散時には単独で運用されることもありました。晩年はクハ210形やモハ150形同士で2両以上の編成を組んで運用され、新製車グループは1992年まで、車体流用車グループは1988年まで在籍しました。

主要機器

主電動機はMT4、台車は釣り合い梁式のTR14Aと、いずれも国鉄制式の機器を採用しています。これらは西武311系・371系電車の廃車発生品でしたが、主制御器のみ小田急電鉄の廃車発生品と推定される三菱電機製の電磁単位スイッチ式自動加速制御器ABF-154-15が搭載されました。

制動装置はA動作弁を採用したAMA自動空気制動です。各車が装備するTR14A台車はブレーキシリンダーを持たないため、車体側にブレーキシリンダーを1基搭載し、ブレーキロッドを介して前後の台車4軸すべてを制動する古典的なブレーキシステムが採用されました。

各グループの詳細

以下に、主要機器以外の仕様と導入後の動向について、各グループごとに詳しく説明します。

新製車グループ（モハ150・151）

1972年3月にモハ150が、1973年5月にはモハ151が、それぞれ西武所沢工場で新製されました。

仕様

車体は全長18m級の全鋼製で、両妻面は緩やかな三面折妻形状です。側面は幕板を屋根まで巻き上げた張り上げ屋根構造で、乗務員扉や側窓の形状も、当時西武所沢工場で製造されていた西武101系電車と類似しています。客用扉は1,100mmの片開き扉で、片側に3箇所ずつ設置されました。窓配置はd1D4D4D1dです。ベンチレーターはグローブ型で、屋根中央部に5個、パンタグラフは富田・近鉄富田寄りに1基搭載しています。

前照灯は、モハ150は白熱灯1灯式でしたが、モハ151ではシールドビーム2灯式に変更されました。モハ151の前照灯は大型ライトケースにシールドビーム2個を組み込んだもので、この形状は後続の車両にも広く採用されました。車体塗装は青みがかった深緑色をベースに、窓周りを緑がかったクリーム色とした、当時の三岐鉄道の標準塗装でした。

導入後の変遷

導入後、車体塗装は黄色地に車体裾をオレンジ色とした新標準塗装に変更されました。前面左側の窓内側には、西武鉄道から購入した電照式行先表示器が設置され、モハ150の前照灯もシールドビーム2灯式に改造されました。ただし、モハ150のライトケースはモハ151と同一形状ながら、電球が内嵌め式に変更されたため、電球周りの形状が異なります。その他は大きな改造を受けることなく運用されました。1987年にはATSの整備とワンマン運転対応工事が実施されました。

本グループは、三岐鉄道の車両の中で最も新しい部類でしたが、主要機器の老朽化と、20m級車両が主流となった三岐線において18m級の本グループは輸送力で見劣りするようになったため、新型車両導入に伴い置き換えられることになりました。1991年12月にモハ150が、1992年5月20日にモハ151が廃車となり、この形式は全廃となりました。

廃車後は、車体流用車グループを含めて全車解体処分され、現存する車両はありません。

車体流用車グループ（モハ155・156）

1974年1月に廃車となった相鉄2000系クハ2500形2512・2513の車体を譲り受けたものです。これらの車両は相鉄2100系電車新製時に主要機器を供出していたため、車体のみが譲渡されました。1974年10月より西武所沢車両工場で改造が行われ、1975年1月に完成しました。

仕様

車体は腰高な窓、扉間の側窓2枚おきに設けられた太い窓間柱、深い屋根など、国鉄モハ30形そのままの外観でした。全長は17mに満たない小型車でした。ただし、相鉄在籍時に車体更新工事が実施されており、リベット組立の半鋼製車体ではなく、全溶接工法の全鋼製車体となっていました。

導入に際しては、新製車グループと同じ主要機器を搭載して電動車化され、旧連結面側にも運転台が新設されて両運転台構造に改造されました。新設された運転台は既存の運転台とほぼ同じ外観で、運転台直後の側窓が戸袋窓である点以外に外観上の差異はありませんでした。窓配置はd1D2・2D2・2D1d、パンタグラフは富田・近鉄富田寄り（既存運転台側）に1基搭載しています。ベンチレーターはガーランド型で、屋根上に左右5個ずつ計10個設置されました。雨樋は相鉄在籍時と同じく幕板部に設置され、新製車グループのような張り上げ屋根構造ではありません。

前照灯は、当初は取付型のシールドビーム1灯式でしたが、シールドビーム2灯式に改造されました。相鉄時代の前照灯ケースをそのまま利用したいわゆる「ブタ鼻」形状ではなく、大型の車体一体型前照灯ケースを新設し、新製車グループのモハ151と同じシールドビームユニットが取り付けられました。車体塗装は、当初は新製車グループと同様に青みがかった深緑色をベースに、窓周りを緑がかったクリーム色としたツートンカラーでした。

導入後の変遷

導入後は、新製車グループと同様に車体塗装の変更や、前面左側の窓内側への電照式行先表示器の設置といった小改造が施された程度で、大きな改造を受けることなく運用されました。

しかし、ATSの整備とワンマン運転開始に際して、本グループは車体が小型であったため機器の取り付けスペースの確保が難しく、対応工事の対象外となりました。601系607編成の導入により置き換えられることになり、1988年3月20日に2両とも廃車・解体されました。

車歴

(省略)

注釈

(省略)

参考文献

(省略)

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