三島由紀夫レター教室

三島由紀夫『レター教室』

『三島由紀夫レター教室』は、三島由紀夫による長編小説で、手紙を通じて展開される独特の形式が特徴的です。1966年から1967年にかけて『女性自身』で連載され、1968年に新潮社から単行本が刊行されました。この作品は、ユーモアと娯楽性に富んだ内容で、登場人物たちの複雑な人間関係が手紙を通じて描かれています。

物語は、45歳の未亡人・氷ママ子から始まります。彼女は英語塾を経営する元美人で、大学生と高校生の息子がいる社交的な女性です。ママ子の友人には、同じ年齢の有名デザイナー・山トビ夫がいます。彼は自己主張が強く、様々な恋愛経験が豊富ですが、あくまで親友としてママ子とは関わっています。

そして、ママ子の元生徒である20歳のOL・空ミツ子が登場します。彼女は、ママ子の影響を受けて魅力的な女性に成長し、楽しい日々を送っています。物語が進むにつれて、空ミツ子は炎タケルという劇団員と出会い、恋に落ちます。炎タケルは23歳で、真面目な性格の持ち主ですが、彼もまた空ミツ子と惹かれる一方で、彼女の生活環境に不安を感じています。

物語の中で、各キャラクターは手紙を通じて愛や嫉妬、友情といった感情を対話するのですが、特に氷ママ子の行動がストーリーを緊張させます。彼女は炎タケルに密かに恋し、空ミツ子を引き裂くために策略を巡らします。このように、手紙はキャラクターたちの真実の感情を映し出す重要なツールとなっています。

また、丸トラ一という登場人物も物語に重要な役割を果たします。彼は空ミツ子の従兄であり、面倒見の良い性格から、物語での橋渡し役となります。物語は彼の行動を通じて、手紙がどのように人間関係に影響を与えるかを更に深めています。

物語は最終的に、氷ママ子と山トビ夫の関係へと収束します。心の葛藤や思惑が入り組む中で、手紙のやり取りは彼らの優先順位を明確にし、意外な結末を迎えます。ママ子は最終的に山トビ夫との仲を修復し、二人は幸せな関係に戻ります。

この作品は単なる恋愛小説にとどまらず、手紙という媒体を利用して人間関係の複雑さや深さを描き出しています。また、三島由紀夫のエンターテイナーとしての才能が見事に発揮され、読者を楽しませる要素が散りばめられています。

日本文学において、手紙は感情を伝える重要な役割を果たしてきましたが、本作ではさらに一歩進めた視点で手紙の持つ影響力を探求しています。感情を伝える一方で、それを隠す側面もしっかりと描かれることで、より現実的で緊張感のある人間関係が活写されています。読者は、登場人物の一喜一憂を通じて、手紙の奥深さを体感し,また同時に自己の感情を見つめ直す機会を得ることができます。

このように、『三島由紀夫レター教室』は手紙を中心に据えた独特な形式と、ユーモアに満ちたストーリーラインにより、三島由紀夫の世界観を新たに体験することができる作品です。

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