三式対戦車手榴弾

三式対戦車手榴弾について

三式対戦車手榴弾（さんしきたいせんしゃしゅりゅうだん）は、第二次世界大戦の太平洋戦争において日本軍が開発した対戦車用の手榴弾です。この兵器は、戦争の末期にフィリピンや沖縄の戦闘に実際に投入されることとなりました。この手榴弾は、一般的な手榴弾とは異なり、円錐形の弾体を特徴とし、外部は麻袋で包まれているため、一見すると投擲用兵器には見えません。

この兵器は、昭和18年（1943年）に制式化された省資源型の対戦車兵器であり、戦の準備として多くが製造されました。昭和19年度に200,000個、昭和20年度に56,700個が生産され、合計で256,700個にも上ります。米軍に捕獲されたものの中には、フィリピンで現地部隊により自作生産されたと考えられる型も存在しました。

構造と使用方法

三式対戦車手榴弾は、その独特な形状と構造を持っています。典型的な手榴弾の形状とは異なり、円錐形の本体は麻袋で包まれていて、外見は「房のついた麻袋」となっています。直径約10cmの円錐形弾体には、金属製のライナーと成形炸薬が入っており、この構造により、発射時の衝撃で最大の効果を発揮します。

投擲の際は、麻袋の先端部分を開き、信管の安全ピンを抜いた後、元に戻して麻束を持ち投げます。麻束は投擲後の手榴弾の空中姿勢を安定させ、底部から目標に向かっての飛行を助けます。衝撃で信管が作動することで、成形炸薬が効果的に目標の装甲を貫通し、内部を破壊します。

対戦車能力

三式対戦車手榴弾には、大小の2つのバリエーションがあり、それぞれ異なる装甲の穿孔能力があります。大の方は撃角45度で80mmの装甲を貫通することができ、小の方は同条件で50mmの装甲を穿孔します。これは時代のニーズに応じた設計であり、急速に変化する戦場環境に対応することを意図しています。

米軍による調査

アメリカ軍は、鹵獲した三式対戦車手榴弾の調査を行い、この兵器に使われている炸薬がTNTとPETNを50対50で混合したものであることを確認しました。この炸薬は、円錐状に成型され、底に木製のスペーサーがあり、発射時の効果を最大限に引き出せるよう工夫されています。

三式対戦車手榴弾の仕様には、甲、乙、丙の3つの種類があり、それぞれの火薬の種類や重量が異なります。甲は全長17.3cm、全重1,270g、炸薬量853g、乙は全長14.8cm、全重853g、炸薬量690gです。

類似の兵器

この兵器は、同時期に開発された円錐爆雷とも類似性があります。円錐爆雷は、戦車の甲板に設置して使用され、炸薬の量に応じて異なる貫通力を持ちます。

このように、三式対戦車手榴弾は日本陸軍の対戦車兵器として特異な役割を果たし、不足する金属資源を考慮した上での開発がされました。将来の戦闘での技術的進化を受け継ぐうえでも興味深い兵器です。

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