三村包常

三村包常：赤穂浪士の影の支え、そして裏門突破の勇士

三村包常は、江戸時代前期、赤穂藩に仕えた武士です。1667年、播磨赤穂藩に生まれました。通称は次郎左衛門。四十七士の一人として知られていますが、台所役人という、7石2人扶持の低い身分でした。寺坂信行を除けば、四十七士の中で最も低い身分であったと言われています。

彼の生涯は、主君浅野長矩の悲劇と深く関わっています。1701年3月14日、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ事件は、赤穂藩の改易、そして赤穂浪士の物語の始まりとなりました。赤穂城が開城された後も赤穂に留まった包常は、浪人となった旧藩士たちの生活を支える重要な役割を担っていました。

同年5月20日の中村正辰の書簡には、包常が浪人たちの薪炭などの世話をしていたことが記されています。この献身的な行動は、大石良雄からも高く評価され、感謝状を受けたと言われています。赤穂事件後、包常の活動はますます重要なものとなっていきました。1702年1月には、山科まで赴き、大石良雄に神文血判書を提出しています。これは、討ち入りに向けた重要な意思表示であったと考えられます。

同年10月には、大石良雄らと共に江戸へ下向。日本橋石町三丁目の小山屋弥兵衛方に同宿しました。低い身分であった包常は、主に同志たちの連絡役を務めていたようです。これは、彼の信頼の厚さと、周囲への配慮を示すエピソードと言えるでしょう。

そして迎えた吉良邸討ち入り。包常は、裏門隊に所属し、杉野次房と共に、木槌で裏門を破るという危険な任務を担いました。この任務は、討ち入りの成功に大きく貢献したと言えるでしょう。裏門からの突入は、吉良家への奇襲攻撃として重要な役割を果たしたのです。

討ち入り後、包常は岡崎藩主・水野忠之の中屋敷に預けられました。そして、1703年2月4日、水野家家臣田口安左衛門の介錯で切腹しました。享年37歳。主君浅野長矩と同じ泉岳寺に葬られ、法名は刃珊瑚劔信士とされました。

低い身分でありながら、赤穂事件において重要な役割を果たした三村包常。主君への忠義、そして浪士仲間への献身的な姿勢は、彼の生涯を象徴するものです。赤穂浪士四十七士の中でも、その存在感は際立っており、彼ら全体の行動を理解する上で欠かせない人物と言えるでしょう。彼の行動は、単なる家臣としての忠義を超え、人としての深い情と責任感を示すものでした。そして、その生涯は、後世に語り継がれる赤穂義士の物語において、重要な一ページを刻んでいます。

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