三村景一

三村景一：関西放送界を牽引したプロデューサーから経営者へ

三村景一氏は、日本のテレビ業界において、プロデューサーとしての卓越した手腕と、経営者としての改革精神で知られる人物です。1955年兵庫県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、1977年に毎日放送（MBS）に入社しました。

MBS入社後、ラジオ制作部でキャリアをスタートさせ、『ありがとう浜村淳です』や『MBSヤングタウン』といった人気番組に携わります。その後、制作局へ異動し、『夜はクネクネ』や『4時ですよーだ』といった関西を代表するローカル番組のディレクター、プロデューサーとして活躍。全国ネット番組『超!よしもと新喜劇』のチーフプロデューサーも務めるなど、幅広い番組制作に貢献しました。

三村氏の才能が最も発揮されたのは、地域密着型情報ワイド番組『ちちんぷいぷい』でしょう。1999年10月の改編でスタートしたこの番組で、三村氏はプロデューサー、チーフプロデューサー、そして最終的には最高責任者として制作に携わりました。長きに渡り続いた人気番組の成功には、三村氏の功績が大きく貢献していると言えるでしょう。

番組制作現場から離れ、2007年には取締役制作局長、2009年には取締役テレビ営業局長に就任。その後、東通企画やゾフィープロダクツの取締役も務め、2011年にはMBSの常務取締役に昇進します。そして2015年、MBSの第9代社長に就任。テレビ制作出身の社長は18年ぶり2人目であり、MBS開局後に生まれた人物としては初の社長就任となりました。

MBS社長在任中は、前任者の河内一友氏が成し遂げられなかった課題の解決と、コンテンツプロバイダーとしてのMBSの更なる成長を目指しました。具体的な取り組みとしては、ワイドFM放送の実現、ラグビー推進プロジェクト、持株会社制への移行、そして『ちちんぷいぷい』を含む番組の大規模な再編などが挙げられます。

ワイドFM化では、近畿圏の他局との連携を推進し、2016年にはMBSラジオが中波とFMの2波体制を実現。ラグビー推進プロジェクトでは、ラグビーワールドカップでの日本代表の躍進を機に、関西地方におけるラグビーの盛り上げに貢献しました。2018年度の全国高校ラグビー大会では12年ぶりに準決勝・決勝のラジオ中継を復活させるなど、ラグビー中継にも力を入れました。

持株会社制への移行は、他系列局との調整に時間を要しましたが、2017年にMBSメディアホールディングスを設立し、新体制に移行することに成功しました。この改革は、MBSの今後の発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

さらに、本社2階のスタジオを情報フロア「ライブセンター」に改装し、報道・制作両局間の連携強化を図りました。この「ライブセンター」の運用開始に伴い、『ちちんぷいぷい』と『VOICE』の大規模なリニューアルを実施。番組編成の刷新を行い、『ミント!』という新しい番組をスタートさせました。

2020年には、ラジオ放送事業の分社化を推進し、「株式会社MBSラジオ」を設立。テレビ放送事業との分離を進めました。これは、変化するメディア環境への対応として重要な決断でした。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う収益構造の悪化を受け、テレビ番組のタイムテーブルを刷新。長寿番組『ちちんぷいぷい』と『ミント!』を終了させ、『よんチャンTV』をスタートさせるなど、大胆な改革を行いました。

2021年6月に毎日放送社長を退任し、MBSメディアホールディングス会長も2022年6月に退任。現在は同社の顧問として、その経験と知見を活かしています。

三村氏の家系は、阪急阪神東宝グループや三菱商事など、日本経済界を代表する名家と深い繋がりがあります。このような環境で育まれた幅広い見識と人脈が、三村氏の成功の背景にあると言えるでしょう。

三村景一氏は、単なるテレビプロデューサーや経営者としてだけでなく、関西放送界の未来を担うキーパーソンとして、大きな足跡を残しました。その功績は、今後も長く記憶されることでしょう。

もう一度検索