三業惑乱

三業惑乱についての詳細

三業惑乱（さんごうわくらん）は、江戸時代中期の浄土真宗本願寺派内に発生した深刻な宗教的対立を指します。この事件は、本来宗教的なものであったため、本願寺派の内部だけで解決できるはずでしたが、事態は次第に拡大し、最終的には江戸幕府の寺社奉行も介入せざるを得ない状況にまで至りました。これは、西本願寺教団史上、最大の異端事件として評価されています。

経緯と背景

この騒乱の発端は、宝暦年間に広まった「無帰命安心」という教義にありました。これは阿弥陀仏が成仏した時から衆生の救済が既に成就しているとする説で、信者の心のよりどころが薄いという欠点を抱えていました。これに対抗するために、本願寺の本山は、教義の守護に乗り出し、功存が主唱者の浄願寺龍養を糾明する活動を行い、『願生帰命弁』を著しました。彼の考えは「三業帰命説」というもので、これは信者が心・口・身の三つの業を用いて阿弥陀仏に救いを求めることを前提としていました。

古義派との対立

この教義に対し、全国の僧侶や信徒の中には、特に安芸の大瀛や河内の道隠といった古義派の学僧が存在し、彼らは智洞を代表とする新義派の教義に疑念を抱きました。古義派は「頼む」と「信じる」という行為が同じであり、他力本願の考え方から見て三業帰命説は自力ではないかと主張しました。これにより、紛争は次第に全国各地に広がり、門徒の動揺は大きくなっていきました。

複雑化する混乱

1801年、信者たちは示威的な行動を起こすようになり、事態はさらに深刻化します。特に大垣藩の百姓たちが本山に抗議に集まるという事件が起こり、江戸幕府にも通知がされることになりました。この事件の収束が困難な中で、幕府はついに介入せざるを得ない状況に直面しました。

幕府の介入と裁定

脇坂安董寺社奉行は、事件の詳細を聴取した結果、三業帰命説を異安心と認定し、本願寺派本山に対して警告を発しました。事態が収拾できない中、教団内部では大きな対立が続き、出発点となった智洞や大瀛ら学僧は入牢され、その後の討論が江戸で行われるに至りました。

事件の結末

最終的には、1806年に脇坂安董が本願寺派に対する閉門処分を行い、これにより宗門内の混乱はようやく収束しました。以降、本願寺内では能化職が廃止され、新たに勧学職が設けられました。この事件は、江戸時代を代表する法論の一つとして記憶され、在野の学僧たちの信念をも勝利に導く結果となりました。

影響とまとめ

三業惑乱は、江戸時代の宗教界において重要な出来事であり、その後の宗教的な教義の運営に大きな影響を与えました。後なる識者たちにより、真宗の教義が中心的な立場として再評価される契機ともなったと言えるでしょう。

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