勧学

勧学とは

勧学（かんがく）とは、日本の仏教宗派において、教義の研究に特に優れた、宗門を指導する立場にある僧侶に授けられる最高位の称号です。この制度は近世末期頃から見られるようになり、現代に至るまで多くの宗派で維持されています。

多くの宗派では、僧侶としての階級である僧階とは別に、教学面での学問的な階梯を設けており、これを学階と呼びます。勧学はこの学階制度における最高位として位置づけられています。

勧学を置く主な宗派

勧学の称号は、特に浄土宗や天台宗、浄土真宗本願寺派など、教学の伝統を重んじる宗派で見られます。これらの宗派において、勧学は宗門の教学を牽引し、その維持発展に重要な役割を果たしています。

天台宗における勧学

天台宗では、勧学の学階にある僧侶の中から、宗派の教学に関する諮問に応じる役割を担う「出仕勧学」が任命されます。これは、宗門の教義解釈や教学方針について、勧学の識見が求められる場面があることを示しています。

浄土真宗本願寺派における勧学

浄土真宗本願寺派においては、勧学は複数名が任命されます。80歳未満の勧学については定員が設けられています。勧学の任期は終身であり、一度任命されるとその資格は生涯続きます。80歳未満の定員に空きが生じた場合、学階で勧学に次ぐ位階である司教の中から、新たな勧学が補充される形で選ばれます。この補充において、司教となった年次に関わらず、後に司教になった者が先に勧学に任じられるケースも少なくありません。

勧学寮とその役割

浄土真宗本願寺派には「勧学寮」と呼ばれる重要な機関があります。これは数名の勧学によって構成され、門主（宗派の代表者）の教学に関する諮問機関として機能します。特に、門主が発する消息（教義に関する文書）の内容など、宗派の根幹に関わる教学的な問題について、勧学寮が検討し、門主に対して回答や提言を行います。勧学寮のメンバーは勧学の中から選ばれ、その代表者はメンバー間の互選によって「勧学寮頭」と呼ばれます。

勧学の主な職務

勧学は、勧学寮での役割の他にも、宗派の重要な儀式や活動において中心的な役割を担います。

改悔批判の与奪: 宗派の最も重要な仏事である御正忌報恩講において、門主に代わって改悔批判（懺悔と仏法への帰依を表明する儀式）の許可を与える役を務めます。
夏安居の本講: 僧侶の研修期間である夏安居において、重要な教義に関する主要な講義（本講）を担当します。
* 法義示談: 門信徒からの教義に関する質問に対して、勧学が直接応じる機会を持ちます。これは、門信徒の教学理解を深める上で重要な役割を果たします。

その他の宗派における勧学

浄土宗西山派や真宗興正派、真宗高田派など、他のいくつかの宗派においても勧学の称号が設けられています。これらの宗派においても、勧学は教学の最高権威として、宗門の教義継承や指導に貢献しています。

まとめ

勧学は、日本の特定の仏教宗派において、教学の専門家として最高位に位置づけられる称号です。宗派の教義研究を深化させ、その伝統を正しく伝えるとともに、門主への諮問や門信徒への指導を通じて、宗門全体の教学レベルを維持向上させる上で、欠くことのできない極めて重要な存在と言えます。

もう一度検索