三浦梧門

三浦梧門：長崎を彩った南画の巨匠

三浦梧門（みうら ごもん、1808年1月31日 - 1860年12月20日）は、江戸時代後期に長崎で活躍した卓越した南画家です。鉄翁祖門、木下逸雲らと共に「長崎三大家」に数えられ、その名は今なお人々の記憶に深く刻まれています。

諱は惟純、字は宗亮、通称は総助または惣吉。梧門は号で、他に秋声、荷梁、香雨といった雅号も用いました。長崎本興善町乙名に居住し、代々平戸藩家臣を務めた三浦総之丞の長男として生まれました。邸内に植えた梧桐を愛でたことから「梧門」の号を名乗ったと伝えられています。

梧門は、当初、唐絵の目利きとして知られた渡辺秀実や石崎融思に師事しました。しかし、彼は舶載された中国の古書画や名品を丹念に研究し、独自の画法を確立していきました。その画風は多様性に富み、得意とした米法山水画は数多くの作品を残しています。中でも「雪景山水図」は特に注目に値する作品です。

山水画だけでなく、人物画や花鳥画も巧みに描き分け、土佐絵風の作品も見られます。特に人気の高かったのが「鍾馗図」です。鍾馗は、疫病や悪鬼を退治する中国の神様であり、梧門の描いた鍾馗図は、病気平癒のご利益があると信じられ、多くの人々から愛されました。彼はこのモチーフを好んで描き、その力強い筆致と独特の表現は、人々の信仰心を深く捉えています。

さらに、伊藤若冲の「乗興舟」のような、正面から花卉を描いた作品も確認されています。これは、当時、長崎が海外文化との交流を通じて高度な文化水準に達していたことを示唆しています。梧門の作品群は、彼の多様な表現力と、当時の長崎の豊かな文化を鮮やかに伝えてくれます。

代表作として挙げられるのが、長崎歴史文化博物館が所蔵する「鍾馗禳魔図」（1858年）です。この作品は、梧門の画業における到達点の一つとして高く評価されています。緻密な描写と力強い筆致、そして深い色彩感覚は、見る者の心を強く捉えます。

53歳でその生涯を閉じ、本蓮寺に眠ります。門弟に伊藤深江がおり、彼の画業は後世へと受け継がれていきました。

三浦梧門の作品は、単なる絵画としてだけでなく、当時の長崎の社会や文化、人々の信仰や生活を反映する貴重な資料でもあります。彼の作品を通して、江戸時代の長崎という活気に満ちた都市の様子、そして豊かな芸術文化の一端に触れることができるでしょう。 彼の多才な画風と、数々の傑作は、今もなお人々の心を魅了し続けています。

参考文献

阿野露団『長崎の肖像 長崎派の美術家列伝』 形文社、1995年
植松有希 「長崎の南画家・三浦梧門について」『長崎歴史文化博物館 研究紀要』第8号、2014年3月、pp.15-30

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