三職推任問題

三職推任問題とは

三職推任問題は、天正10年（1582年）に織田信長が朝廷から提示された官職（征夷大将軍・太政大臣・関白）の推任を巡る問題です。この問題は、単なる官位の問題に留まらず、当時の織田政権の将来構想や、本能寺の変の背景を考察する上で重要な意味を持ち、歴史学上の論争点となっています。

背景

織田信長は、足利義昭を奉じて上洛した後も、比較的低い官位に留まっていました。しかし、義昭追放後、信長の官位は急速に上昇し、右大臣にまで昇進します。その後、信長は官職を辞し、散位となります。その時期に、朝廷から信長に対して左大臣就任の打診がありましたが、信長は天皇の譲位を条件としたため、実現しませんでした。さらに、甲州征伐で武田氏を滅ぼし、北条氏も従属させた信長に対し、朝廷は改めて官位の推任を検討します。

問題提起

武家伝奏の勧修寺晴豊と京都所司代の村井貞勝の間で、信長の任官に関する話し合いが行われました。その中で、信長に征夷大将軍、太政大臣、関白のいずれかの官職を推任するという話が持ち上がります。この時、官位を推任する提案をどちら側から持ちかけたのかが、三職推任問題の中心的な論点です。この問題は、信長が朝廷をどのように扱おうと考えていたのかを考察する上で重要な資料となりえますが、信長からの正式な回答がないまま本能寺の変が起こり、真相は謎に包まれています。

論争点

三職推任問題は、信長と朝廷の関係をどのように捉えるかによって、解釈が分かれます。

対立説: 信長は朝廷を軽視し、官位に興味を示さなかったという説
融和説: 信長は朝廷との関係を重視し、官位を受け入れる意向があったという説

また、勧修寺晴豊の日記『晴豊公記』の解釈を巡っても、論争があります。従来は、朝廷側が三職を推任したと考えられていましたが、近年では、信長自身が官位を望んでいたとする説も提唱されています。

信長の真意

信長がどの官位を望んでいたのか、あるいは官位を辞退するつもりだったのか、様々な説があります。

太政大臣説: 信長は平氏を自称しており、平清盛に倣って太政大臣を望んでいたという説
関白説: 当時の日本において、関白が最も尊い地位であると認識されていたという説
征夷大将軍説: 勧修寺晴豊が日記に「将軍になさるべき」と記しているという説
辞退説: 信長は天皇と誠仁親王に返事をすると言い、その後、朝廷に動きが見られないことから、辞退したとする説。天下統一を優先していた、あるいは自身の官位よりも織田家当主である信忠の昇進を望んでいたという見方がある。

結論

三職推任問題は、織田信長の朝廷に対する姿勢や、天下統一の構想を理解する上で重要なテーマです。しかし、本能寺の変によって信長の真意は不明のままとなり、現在も歴史学者による様々な議論が続いています。

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