三船殉難事件

三船殉難事件

三船殉難事件（さんせんじゅんなんじけん）は、第二次世界大戦の終戦を迎えた1945年8月22日に、北海道留萌沖で発生し、日本の緊急疎開船3隻がソ連軍の潜水艦から攻撃を受け、多くの命が失われた悲劇的な事件です。この事件は、三船遭難事件とも呼ばれ、当時の混乱の中で多くの人々が犠牲となりました。

背景

1945年8月8日深夜、ソ連は日本に対して宣戦布告を行い、満洲や南樺太に侵攻を開始しました。これに対し、大日本帝国政府は8月15日にポツダム宣言を受諾し、降伏を決定しました。16日、柏木季一郎中将は北海道へのソ連の進駐を阻止するため、南樺太において第88師団に死守を命じました。この状況の中で、大津敏男樺太庁長官は、特に老人や子供、女性を本土に疎開させるための船を手配しました。

疎開船の出航

1945年8月13日、最初の疎開船である宗谷丸が出航し、その後に小笠原丸や第二号新興丸、泰東丸などが続きました。しかし、疎開が行われた背景には、樺太からの脱出を試みる人々の混乱がありました。樺太庁職員や軍関係者が優先的に疎開船に乗船したことが後に批判を受けました。特に小笠原丸には多くの逓信省関係者が乗船しており、彼らの不安感が伺えました。

小笠原丸の沈没

8月20日、疎開船の一隻である小笠原丸は、疎開者を乗せて稚内に向かう途中、ソ連の潜水艦L-12による攻撃を受け、沈没しました。乗船者638名が犠牲となり、約61名が生き残りました。乗客の中には後に有名な大相撲力士となる大鵬がいましたが、稚内で下船し難を逃れました。沈没後、残された生存者たちは、気になる遺体やフロートに掴まり漂流していました。この惨劇の様子は、近隣の監視哨からも目撃されていました。

第二号新興丸の攻撃

その後、第二号新興丸は約3,400名を乗せて小樽に向け出航しましたが、留萌沖でソ連の潜水艦L-19からの攻撃を受け、船体に大穴が開きました。急報を受けて応戦しながらも、多くの死者を出す結果となり、遺体は229体が確認されましたが、行方不明者はさらに多く、最終的には約400名が犠牲となったとされています。

泰東丸の沈没

更に泰東丸も、他の疎開船の漂流物に怯えながら出航しましたが、8月22日にソ連潜水艦L-19の攻撃を受けて沈没しました。乗客780名のうち667名が命を落としました。潜水艦からの砲撃に無防備な状態で晒された泰東丸は、陸軍の警備兵が乗り組んでいましたが、撃退しきれずに沈没しました。

国籍秘匿の潜水艦

この事件において攻撃を行った潜水艦の正体は、戦後しばらくの間「国籍不明」とされていましたが、最終的にはソ連の潜水艦であることが確認されています。事件直前には停戦の意思が通達されていたため、事件の不当性が浮き彫りになりました。

追悼と記憶

この事件の犠牲者を悼むため、北海道の各地に慰霊碑が建立されています。毎年8月22日には樺太引揚三船遭難遺族会主催の慰霊祭が行われています。また、様々な作品や記録でこの悲劇が今に伝えられています。

三船殉難事件は、終戦の混乱期に発生した悲劇であり、教訓として語り継がれています。多くの命が失われたこの事件の真相を探ることは、歴史を理解する上でも重要です。

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