三船浩

三船 浩（みふね ひろし）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の男性歌手です。本名を森田肖三といい、1929年9月28日に新潟県新井市（現在の妙高市）に生まれました。

彼の歌手への道は、1951年のNHKのど自慢での成功から始まりました。この大会で新潟県代表となり、関東・甲信越ブロックを勝ち抜いて全国大会で第3位に入賞するという輝かしい成績を収めました。その後、地元新潟放送でラジオ番組の制作やディスクジョッキーとして経験を積み、音楽への情熱を胸に上京しました。

プロ歌手としての第一歩を踏み出したのは、1956年12月です。キングレコードより「男のブルース」（作詞：藤間哲郎、作曲：山口俊郎）でデビュー。この曲で、彼の最大の魅力である豊かな低音ボイスがいかんなく発揮され、注目を集めました。芸名の「三船浩」は、彼自身が柔道四段の腕前を持っていたことにちなみ、講道館の偉大な柔道家である三船久蔵十段から命名されたものです。

デビュー後まもなく、彼は当時の歌謡界に巻き起こっていた低音ブームの中心的存在の一人となりました。フランク永井、神戸一郎、石原裕次郎といった、同じく魅力的な低音を持つ人気歌手たちと共に、一世を風靡しました。彼の歌声は、単に低いだけでなく、艶のある高音部分も持ち合わせており、非常に広い音域をカバーできたことも特筆されます。

「男のブルース」に続き、「さようなら故郷さん」「東京だより」「夜霧の滑走路」「黒帯の男」「サワーグラスの哀愁」「小樽の赤い灯が見える」「男の酒場」など、数多くのヒット曲を世に送り出しました。また、歌手活動にとどまらず、子どもたちの間でも人気を博しました。国産初の連続テレビ映画として知られる「月光仮面」の挿入主題歌である「月光仮面の歌」や、「豹の眼」の主題歌を歌唱し、テレビを通じて幅広い世代にその歌声を届けました。

NHK紅白歌合戦には、これまでに3回出場しており、その人気と実力が広く認められていました。生涯を通じて、1995年に発表した最後の作品「大地よ」まで、実に526曲ものレコーディングを残しています。

歌手としてだけでなく、スポーツ万能でも知られ、特にゴルフではシングル・ハンディの腕前を持つなど、多才な一面を持っていました。また、彼の幅広いレパートリーの中には、軍歌も多数含まれており、その力強い歌声は様々なジャンルで支持されました。

歌手としての活動と並行して、歌謡界の発展にも貢献しました。1991年から1995年までの期間、日本歌手協会の理事長として、その運営と振興に尽力しました。

2005年7月8日、心筋梗塞のため東京都府中市の病院で死去しました。享年75歳でした。

俳優としても活動しており、映画『男のブルース』（1958年）、『赤いランプの終列車』（1958年）、『海賊船 海の虎』（1964年）や、テレビドラマ『特別機動捜査隊』第404話「待っていた人」（1969年）などに出演しています。

三船浩は、その類稀なる低音と広い音域、そして多才な活動によって、日本の歌謡史に確かな足跡を残した歌手と言えるでしょう。

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