三菱マテリアル四日市工場爆発事故

三菱マテリアル四日市工場爆発事故

2014年1月9日、三重県四日市市に所在する三菱マテリアル四日市工場で、高純度多結晶シリコン製造プラントにおける熱交換器の洗浄作業中に、爆発火災が発生しました。この事故により、尊い命が失われ、多くの人々が重軽傷を負うという、痛ましい結果となりました。

事故の経緯

事故が発生したのは、第一プラントにおいてシリコン原料を冷却する水素精製設備の熱交換器の洗浄作業中でした。この熱交換器は、直径約1メートル、長さ約5メートルの筒状の構造をしており、内部に付着した可燃性物質を除去するために、事故発生前に設備から取り外され、屋外の酸洗場に置かれていました。

事故当日、熱交換器のステンレス製ふた（重量約250キログラム）を重機で取り外した直後、突如として爆発が発生しました。社員の証言によれば、ふたを取り外してからわずか3秒後に爆発が起きたとされています。爆発の衝撃は非常に大きく、ふたは10メートルほど離れた場所まで吹き飛ばされました。この爆発により、作業員5名が死亡し、13名が重軽傷を負うという、甚大な被害が発生しました。

事故の原因

事故発生当初、工場長は会見で、熱交換器内部に残存していたトリクロロシランから分解生成された水素による水素爆発の可能性を示唆していました。しかし、その後の調査の結果、爆発の原因は、クロロシランポリマー類の低温での加水分解生成物であることが判明しました。この物質は乾燥状態になると爆発威力が増大し、ふたを取り外した際の衝撃が起爆剤となり、爆発に至ったと推定されています。

また、調査委員会は、開放作業中に発生する水素の量を分析した結果、水素が爆発に寄与した可能性は低いと結論付け、水素爆発説を否定しました。事故調査報告書では、爆発はクロロシランポリマー類の分解によって生じた可燃性物質が大気中に噴出し、燃焼したものであると結論付けられました。

事故の影響

この事故を受け、三重県警は業務上過失致死傷容疑で現場検証を開始し、厚生労働省三重労働局と四日市労働基準監督署も立ち入り調査を行いました。これらの調査により、労働安全衛生法や国の規則に照らして安全管理上の問題点が洗い出されました。三重労働局は、この事故を重大な事態と捉え、厳正な調査を行い、問題があれば立件も視野に入れて捜査を進めました。

事故後、三菱マテリアルは四日市工場の操業を一時停止しましたが、地元住民への説明会を経て、地元自治会が継続的な情報開示を条件に操業再開を認めました。その後、四日市市消防本部の緊急使用停止命令が解除されたことを受け、7月1日に工場の操業が再開されました。

また、総務省消防庁は、事故調査委員会の報告や危険物保安技術協会での検討会を踏まえ、クロロシランポリマー類等の取り扱いについて、関係各所に注意喚起を行いました。

三重県警は、事故から3年後の2017年12月5日、当時の工場長と副工場長を業務上過失致死傷容疑で書類送検しました。ただし、事故を予見することは困難であったとして、起訴を求めない意見が付けられました。

この事故は、化学プラントにおける安全管理の重要性を改めて認識させるものであり、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、教訓として後世に語り継がれるべきです。

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