三菱・デリカ

三菱デリカバン/トラック：半世紀の歴史を振り返る

三菱自動車が長年にわたって生産・販売してきた商用車、デリカバンとデリカトラック。その歴史は、1968年の初代モデル誕生から2019年の販売終了まで、実に50年以上にも及びます。本稿では、デリカバン/トラックの系譜を、時代背景とともに詳細に見ていきます。

初代デリカ（1968年 - 1979年）：小型トラックからの出発

1968年7月、マツダ・ボンゴなどをライバルに、600kg積みの小型キャブオーバートラックとして初代デリカが誕生しました。コルト1100と共通の1.1Lエンジンを搭載し、このクラスでは初の3人乗りを実現。翌年には、デリカトラックをベースとしたライトバン、ルートバン、そして9人乗りの乗用モデル「デリカコーチ」も登場し、多様なニーズに対応しました。その後、積載量やエンジンの排気量を増やす改良を重ね、1970年代半ばには1.2Lと1.4Lエンジンのモデルがラインナップされました。デザインも時代とともに変化し、ヘッドライトやバンパーの形状、テールゲートのデザインなどが変更されていきます。

2代目デリカ（1979年 - 1994年）：ボクシーなスタイルと4WD

1979年、2代目デリカはフルモデルチェンジを行い、直線基調のボクシーなスタイルへと進化。全幅は小型車サイズ一杯にまで拡大されました。1.4Lと1.6Lガソリンエンジンに加え、5速MT車も設定されました。1982年のマイナーチェンジでは、三菱の新たなエンブレムであるMMCマークを採用。さらに、国産ワンボックスカーとしては初となる4WDモデルやディーゼルエンジン搭載車が登場しました。ロングボディも追加され、機能性と使い勝手の向上を図りました。1986年にはバンとスターワゴンがフルモデルチェンジを行いましたが、トラックは継続生産。その後も改良を重ね、多様なバリエーションが展開されました。

3代目デリカ（1986年 - 1999年）：多様なボディタイプとパワートレイン

1986年、バンとスターワゴンは3代目へとフルモデルチェンジ。標準とロングの2種類のホイールベースに、エアロルーフとハイルーフを組み合わせ、多様なニーズに対応しました。エンジンは2.0Lガソリンエンジンや2.5Lディーゼルエンジンなど、複数のパワートレインが用意され、4WDモデルも設定されました。マイナーチェンジでは、デザインの変更やAT車の追加、安全装備の充実などが図られました。日本国内での生産は1999年に終了しましたが、輸出向けモデルはその後も生産が続けられました。台湾では、2019年に三菱の新しいデザインコンセプトであるダイナミックシールドを反映した改良モデルが発表されています。

4代目デリカ（1999年 - 2011年）：マツダからのOEM供給

1999年、4代目デリカはマツダ・ボンゴのOEM車となり、大幅なコスト削減を実現。しかし、これはデリカ独自モデルとしての開発終了を意味しました。2010年にはマイナーチェンジを行い、ガソリンエンジンの変更や装備の充実などが図られましたが、2011年にはトラックのOEM供給が終了し、モデル廃止となりました。

5代目デリカ（2011年 - 2019年）：日産からのOEM供給と商用車ブランドの終焉

2011年、5代目デリカバンは日産・NV200バネットのOEM車として登場。ダウンサイジングされましたが、全高を高めることで積載性を確保しました。燃費性能の向上にも力を入れており、環境性能にも配慮したモデルとなっています。2019年、販売終了。デリカの商用車ブランドは、長きにわたる歴史に幕を閉じました。

デリカの車名に込められた意味

「デリカ」という車名は、delivery（運ぶ、配達する）とcar（車）を組み合わせた造語です。商用車としての役割を端的に表現しています。派生モデルのスターワゴン、スペースギア、D:5といった車名にも、それぞれに込められた意味があります。

まとめ

デリカバン/トラックは、日本の商用車市場において長年にわたって活躍し、多くのユーザーに愛用されてきました。その歴史は、日本の経済成長や社会変化を反映するものでもあります。販売終了は残念ですが、デリカが築き上げてきた信頼性は、三菱自動車の歴史の中に刻まれた重要な遺産と言えるでしょう。

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