三菱・デリカスペースギア

三菱 デリカスペースギア：本格オフロード性能と快適な室内空間を両立したミニバン

デリカスペースギアは、三菱自動車工業が1994年から2007年まで製造・販売していた、オフロード走行も可能な4WDミニバンです。スペースギア、スペギア、SGなど様々な愛称で親しまれていました。

ミニバンという新たなジャンルを切り開いた存在

デリカスターワゴンの後継モデルとして登場したデリカスペースギアは、「スーパー・プレジャー・RV」というコンセプトのもと開発されました。当時としては画期的だった、前面衝突時の安全性を考慮したフロントエンジン、ハイルーフの設計は、現在のミニバンの原型と言えるものです。

ベース車両には2代目パジェロが用いられ、その高いオフロード性能を受け継いでいます。パジェロ譲りの4WDシステム「スーパーセレクト4WD」や堅牢な足回りにより、他車種を凌駕する悪路走破性を誇り、アウトドア愛好家から高い人気を博しました。

ボディ構造は、パジェロのラダーフレームをベースにモノコック構造を融合させた独自のビルトインラダーフレーム構造を採用。これにより、高いボディ剛性とフラットな室内空間を実現しました。その室内高は当時最高レベルで、広々とした車内空間を提供していました。2WDロングボディのGグレードは、国産車唯一のフロントエンジン10人乗りワゴンという点でも注目に値します。また、クラッシャブルゾーンを設けた設計により、先代モデルで課題だった重量配分やブレーキ性能も大幅に改善されています。

多様なエンジンと駆動方式

デリカスペースギアには、V6 3.0Lガソリンエンジン（6G72型）、2.8Lインタークーラーターボディーゼルエンジン（4M40型）、直4 2.4Lガソリンエンジン（4G64型）、2.5Lインタークーラーターボディーゼルエンジン（4D56型）という4種類のエンジンがラインナップされていました。中でもV6 3.0Lガソリンエンジンと2.8Lインタークーラーターボディーゼルエンジンが人気を集めました。特に2.8Lディーゼルエンジンは、小型タービンを搭載することで低回転域から最大トルクを発揮し、街乗りからオフロード走行まで幅広いシーンで高い実用性を発揮しました。

トランスミッションは、主流のエンジンには3モードELC前進4段フルオートマチックトランスミッションが搭載され、通常走行時のスムーズな変速と、パワーモード、ノーマルモード、ホールドモードによる走行状況に合わせた変速制御を可能にしていました。マイナーチェンジ後はINVECS-IIが採用され、ドライバーの運転スタイルを学習することで、燃費と加速性能の向上を実現しました。

走破性と快適性を両立させたサスペンション

サスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアに5リンク式コイルスプリングを採用。この組み合わせにより、オンロードでの優れた操縦安定性と、オフロードでの高い走破性を両立しました。ダブルウィッシュボーンは路面追従性を高め、5リンク式コイルスプリングは、悪路でのストローク量を確保しつつ、しなやかな乗り心地を実現しています。また、オプションでファジィ電子制御サスペンションECS（アクティブサスペンション）も設定され、様々なセンサーからの情報に基づき減衰力を最適に制御することで、より快適な乗り心地を提供していました。

多様なバリエーションと進化

デリカスペースギアは、標準ボディとロングボディ、エアロルーフとハイルーフといったボディバリエーションを用意。さらに、ツインサンルーフやクリスタルライトルーフといったサンルーフ付きモデルも設定されました。

発売後も、数々のマイナーチェンジや特別仕様車が登場しました。「ジャスパー」「グリーンフィールド」「シャモニー」といった季節限定車や、アウトドア向けの装備を充実させたモデルなどが人気を集めました。また、2WDモデルでは8人乗り、10人乗りモデルもラインナップされ、様々なユーザーニーズに対応していました。

2007年に国内販売が終了しましたが、その高い実用性と個性的なデザインは、現在でも多くのファンを魅了し続けています。海外では、L400、スペースギア、スターワゴンなどの名称で販売され、ヒュンダイ・スタレックスのベース車両にもなっています。

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