三菱・パジェロジュニア

パジェロジュニア

パジェロジュニア（PAJERO-Jr.）は、かつて三菱自動車工業が製造・販売していたSUVです。本格オフローダーとして知られるパジェロと、軽自動車規格のパジェロミニに続く、パジェロシリーズの新たな一員として市場に投入されました。

概要

1995年、パジェロシリーズの第三弾として登場しました。ベース車両にはパジェロミニが用いられていますが、ボディを拡大し、大型バンパーや樹脂製のオーバーフェンダーなどを装着することで、より普遍的なユーザーがイメージするSUVらしい力強いスタイルを表現しています。販売網も拡大され、従来のギャラン店に加え、パジェロシリーズとして初めてカープラザ店でも併売が開始されました。

エンジンと駆動系

パワートレインには、1.1リッター直列4気筒 SOHC16バルブエンジン（4A31型）を搭載。このエンジンは、パジェロジュニアの生産終了後、トッポBJワイドやタウンボックスワイドにも採用されました。トランスミッションは5速マニュアルと3速オートマチックの選択肢が用意されました。

駆動方式には「イージーセレクト4WD」を採用。これは走行速度が80km/h以下であれば、運転席からのレバー操作のみでFR（後輪駆動）と4WD（四輪駆動）を簡単に切り替えることができるシステムです。

居住性と装備、走行性能

室内空間はベースとなったパジェロミニと同等の広さでした。一部からは、500cc刻みの日本の自動車税制において1100ccという排気量が中途半端であることや、室内空間に対して車両価格が割高ではないか、という見方も存在しました。しかし、その価格上昇分は装備の充実に充てられており、エンジンルームへの遮音材追加による静粛性の向上や、防眩ミラーの採用、さらにエアバッグ、ABS、サイドドアビームといった安全装備がグレード別に標準化されるなど、価値の向上も図られていました。

走行性能においては、本格的な悪路走破性はパジェロに準ずる高いレベルを確保していました。また、パジェロミニと比較してトレッド（左右の車輪間隔）が拡大されたことで、オフロードだけでなく舗装路における高速走行時の安定性も向上していました。

モデルの歴史（H57A型：1995年 - 2000年）

- 1995年 11月: パジェロ・パジェロミニに続くシリーズ第3弾として発売。CMには俳優の反町隆史氏が出演しました。
- 1996年 7月: 特別仕様車「ホワイトジュニア」を発売。
- 1997年5月: 派生モデル「パジェロジュニア・リンクス」が登場。夏のレジャーシーズンに向け、アウトドアライフを楽しむ手軽なモデルとして、ギャラン店およびカープラザ系販売会社で販売されました。
- 1997年9月: カープラザ20周年記念の限定モデル「パジェロジュニア・フライングパグ」を発売。クラシック調の外観と木目調のセンターパネルが特徴で、1,000台限定で提供されました。
- 1997年10月: 冬季向けの特別仕様車「Mc TWIST」が登場。
- 1998年1月: ベース車であるパジェロミニと同時に、特別仕様車「アニバーサリーリミテッド」を設定し発売。
- 1998年3月: 車両の生産を終了。以降は販売店に残る在庫のみでの対応となりました。
- 1998年5月: 派生モデルのリンクスがカタログから落とされました。
- 1998年6月: 三菱自動車のウェブサイトにおける掲載も終了。
- 2000年 4月: ごく僅かに残っていた未登録の在庫車の車両登録を全て完了し、販売を終了しました。パジェロイオが登場するまでの「繋ぎ役」としての役割を終え、約5年間という短い期間で一代限りで絶版となりました。

なお、2001年2月には、パジェロミニとパジェロジュニア合計で運転席エアバッグのリコールが実施されています。

車名の由来

それぞれの名称には以下のような由来があります。

- パジェロ（PAJERO）: チリやアルゼンチン南部のパタゴニア地方に生息するヤマネコ、「パジェロキャット」（またはパンパスキャット、コロコロとも呼ばれる）にちなんでいます。
- ジュニア（JUNIOR）: 「年少者」「下級生」「息子」といった意味合いです。
- リンクス（LYNX）: 北米やユーラシア大陸に生息するヤマネコ、具体的には「オオヤマネコ」を指します。
- フライングパグ（Flying Pug）: 「空飛ぶ子犬」と訳され、クラシックカーのモチーフとなった三菱の試作車「PX33」にちなんだ名前とされます。
- マックツイスト（Mc TWIST）: スケートボードやスノーボードなどのエクストリームスポーツにおける回転技の名称から取られています。

パジェロジュニアは、そのコンパクトなボディに本格的なSUVのエッセンスと充実した装備を凝縮したモデルとして、約5年間の短い期間ながら市場に存在感を示しました。その役割は、後に登場するパジェロイオへと引き継がれました。

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