三角帽子

三角帽子（Tricorne）

三角帽子は、18世紀のヨーロッパとアメリカで広く着用されていた特徴的な帽子で、特に軍人や一般市民に人気がありました。この帽子のデザインは、両脇と後ろの部分が折り返されているため、上から見ると三角形をしています。このため、「三つの」を意味する「tri」という言葉が組み合わさり、トリコーン（Tricorne）と呼ばれています。また、女性が馬に乗る際にも使われていたことが知られています。

歴史的背景

三角帽子の起源は17世紀に遡るとされます。その当時、スペインの兵士がフランドルでかぶっていた丸くてつばの広い帽子がこの帽子の前身とも言われています。また、17世紀後半には、つばが単に巻かれていた帽子が変化していったとのことです。さらに、海賊が船上でつばの煩わしさから帽子を巻き上げてかぶるようになったとも伝えられています。

この帽子の最大の利点は、実用性にあります。つばの上向きの部分があるため、雨が顔に直接かからず、肩に流れ落ちるように設計されています。このため、このデザインは雨をしのぐのに非常に便利でした。以前の広いつばの帽子や高い丈の帽子から、欧米の男性がかつらを着用するようになると、低い三角帽子が登場し、普及していったのです。この間、持ち歩くことが主なスタイルだった「シャポー・ブラ」も存在しました。

素材としてはさまざまなものが使われましたが、主にフェルトやビーバーの毛皮が用いられました。特にカナダで取れるビーバーの毛皮は、ヨーロッパ市場での需要が高く、希少価値がありました。

18世紀になると、海賊として知られていた私掠船隊が統一された海軍として組織化され、軍隊では階級の明確な象徴として制服が採用されました。士官たちはこの三角帽子を好んで着用し、一般の水兵たちはスカルキャップと呼ばれるつばのない帽子をかぶることが多かったものの、後にタールを塗った帆布のつばのある帽子へと変化していきました。このため、その水兵たちは「ジャックタール」とあだ名されました。時が経つにつれて、帽子の形状が変化し、鋭角的なデザインが登場するようにもなりましたが、18世紀末にはかつらと共に三角帽子は次第に廃れていき、二角帽子が主流となったのです。

現代における三角帽子

今日においても、三角帽子は完全に消え去ったわけではありません。例えば、ロンドンの市長が式典の際に黒い羽根をつけた三角帽子をかぶる姿や、スペインの警察機関であるグアルディア・シビルが着用する姿を見ることができます。また、アメリカでは、独立戦争や愛国者と関連付けられ、特に植民地の民兵に象徴される存在となっています。独立戦争にちなんだ名称を持つスポーツチームでは、ファンやマスコットがこの三角帽子をかぶることもあります。さらに、ドイツのフランケン地方やヘッセン地方では、男性の民族衣装として今でも三角帽子が用いられています。

このように、三角帽子は歴史の中で多くの役割を果たしてきました。その独特なデザインと実用性、さらには文化的な象徴としての地位を保ち続けています。

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