フェルト

フェルト（felt）についての詳細

フェルトとは、ヒツジやラクダなどの動物の毛を使って圧縮して作った繊維製品のことを指します。無地の不織布とも呼ばれるこの素材は、化学繊維を用いる製品も存在します。

フェルトの特徴

動物の体毛はウロコ状のキューティクルで覆われており、これを熱や圧力、振動で圧縮することで、キューティクル同士が噛み合い、絡み合います。これが「縮絨」または「フェルト化」と呼ばれるプロセスです。このプロセスを促進するために、石鹸水などのアルカリ性の水溶液を用いることが多く、キューティクルが開いて絡みやすくなります。

フェルトは耐久性があり、断熱性や保温性、クッション性にも優れていますが、引っ張りや摩擦に対する抵抗力は比較的弱い点が特徴です。これにより、産業用製品や服飾製品、絨毯、カーペットなど、さまざまな分野で広く利用されています。たとえば、ピアノのハンマーのカバーなどが代表的なフェルト製品です。さらに、芸術の分野ではフェルトを用いた彫刻作品も存在します。

いったん毛織物に織られたものを通常のフェルト状にまで縮絨したものは「織フェルト」と呼ばれ、この場合は耐久性が向上します。

フェルトの歴史

フェルトは古代から作られていたとされ、最も古い遺物は紀元前5世紀から紀元前4世紀にかけてのもので、現在の中央アジア地域にあたるアルタイ地方に位置するパジリク古墳群で発見されています。古代、遊牧民の文化の中でフェルトは特に重要な役割を果たしており、例えばモンゴルのゲルなど、フェルトで作られたテントが多く見られました。遊牧民は家畜に多くを依存しているため、フェルトを使用して「住」としての機能を強化していたと言えます。

モンゴルの伝統的なフェルト製法

モンゴルでは、羊毛を使ったフェルト製作が伝統的に行われています。製造過程では、羊毛を叩いてふくらませ、糸のように細い無数の繊維が絡み合うようにします。その後、広げた羊毛に乳漿を散布し、数人の作業者が互いに向かい合って筵を巻き込んでいきます。この作業を繰り返すことで、最終的には丈夫なフェルトが出来上がります。

毛氈（もうせん）

日本におけるフェルトは「毛氈」とも呼ばれます。現存する中で最古の毛氈は正倉院に所蔵されており、奈良時代に新羅を経てもたらされたとされています。江戸時代になると、毛氈は庶民の生活にも浸透し、茶道などで「緋毛氈」として利用されるようになりました。

フェルトの工業的用途

フェルトは、工業の分野でも幅広く活用されています。具体的には、帽子や敷物、履物、緩衝材、吸音材、断熱材、自動車の内装などに利用され、その製造コストの低さから多数の製品が生み出されています。特に、通気性や通水性に優れ、製品としての材料の進化が評価されています。

このように、フェルトは既製品から伝統工芸まで、さまざまな用途や文化に根ざしています。その歴史と多様性は、私たちの生活や文化を豊かにする重要な要素となっています。

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