三重交通サ360形電車

三重交通サ360形電車とその派生車両

三重交通サ360形電車は、1954年に製造された762mm軌間用の付随車です。老朽化した木造客車の代替として導入され、その後の変遷で、近畿日本鉄道サ130形、さらに三岐鉄道クハ130形・サハ130形、四日市あすなろう鉄道ク110形・サ120形へと姿を変えていきました。

概要

1950年代初頭、三重交通の各線で運用されていた木造客車を置き換えるため、半鋼製車体の付随車としてサ360形が製造されました。ナニワ工機と帝国車輌がそれぞれ2両ずつ、計8両を製造。当初は三重線に投入されました。

車体

ナニワ工機が開発した丸みを帯びた準張殻構造の軽量車体を採用。これは当時の同社の特徴的な設計で、各地の私鉄にも同様の車両が供給されていました。車体は全溶接構造の鋼製で、窓下には補強用の帯板が露出。内装と床板は木製でした。窓配置はd1D(1)3(1)D2で、将来の制御車化を考慮し、乗務員室が設けられていました。側窓は上段Hゴム支持固定、下段上昇式のバス窓。屋根は張り上げ構造で、クリーム色と濃緑色のツートンカラーが特徴的でした。

主要機器

台車

住友金属工業製の軸バネ式台車を装着。同時期の下津井電鉄クハ22・23ともほぼ同一構造でした。

ブレーキ

非常弁付き直通空気ブレーキ（STEブレーキ）を採用。これは1950年代初頭に三重交通の各線で導入されたもので、列車の安全性を向上させました。

連結器

当初はピン・リンク式でしたが、1966年に北勢線所属車は自動連結器（CSC91形）に交換。内部・八王子線所属車も後に同様に交換されました。

運用

当初は三重線で木造客車の置き換えに活躍。その後、サ2000形の導入により、一部は北勢線に転用されました。1965年の近鉄合併時には、サ130形131 - 138に改番されました。

近鉄北勢線 → 三岐鉄道在籍車

1977年からの北勢線近代化で、サ134・136は制御車ク134・136に改造されました。乗務員室が活用され、前照灯が設置されました。サ135・137は付随車のまま、貫通路が設置され、モ220系の増結用として使用されました。サ138は両妻面に貫通路、台車はKD-219Aに交換され、モ270形とク140形の中間に組み込まれました。

1990年からの改造

ク134は運転台部分を撤去、共通設計の運転台ユニットを接合。ク136は付随車サ136に戻されました。サ135・137にも貫通路が設置されました。塗装はマルーン1色から裾部と扉部がオレンジ色の新標準色に変更。側面窓はユニットサッシ化、内装はメラミン樹脂化粧板に交換、ブレーキはHSC電磁直通ブレーキに、台車はKD-219系に統一されました。

近鉄内部・八王子線 → 四日市あすなろう鉄道在籍車

1982年から1983年にかけての内部・八王子線近代化で、サ131、133は制御車ク110形、サ132はサ124形に改造されました。

ク110形

運転台は260系に準じたものに交換、貫通路が設置されました。内装はメラミン樹脂化粧板とアルミ型材による近代的な仕様に全交換、電動発電機と空気圧縮機を搭載、ブレーキは中継弁付きのACA-Rへ、台車は新製KD-219Eに交換されました。

サ120形

モニ220形から改造されましたが、1両はサ132から改造されました。内装の不燃化、貫通路と車外スピーカーの設置、乗務員室撤去、ブレーキのATA-R化などが実施されました。台車はオリジナルの住友金属工業製が残されました。その後、ブレーキのHSC化、空気圧縮機の変更が施工されました。

まとめ

三重交通サ360形電車は、その後の変遷で大きく姿を変えましたが、そのルーツは北勢線と内部・八王子線で長く活躍しました。特に、外観も形式も異なる車両が、同じ形式から派生したというのは、特筆すべき点です。

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