三重交通モ4400形電車

三重交通モ4400形電車とは

三重交通モ4400形電車は、1959年に三重交通が製造した特殊な構造を持つ電車です。湯の山温泉への観光客輸送を目的とし、日本車輌製造で製造されました。当初は三重線で使用されていましたが、路線の改軌に伴い、近畿日本鉄道（近鉄）を経て、現在は三岐鉄道北勢線で200系として運行されています。

概要

この電車は、モ4401(M-1)-4401(T-1)-4401(M-2)の3車体連接構造を持つ1編成のみが製造されました。当時としては珍しい、垂直カルダン駆動方式を採用したことが最大の特徴です。しかし、この駆動方式は保守に手間がかかり、後に電装解除される要因となりました。

車体

各車両は普通鋼製で、10m級の車体を持ちます。前面は湘南形と呼ばれる2枚窓で、上部にはベンチレーターが設置されています。窓はHゴムで固定され、前照灯は屋根中央に、標識灯は左右下部に配置されています。客用扉は自動式で、当時としては珍しいものでした。車内はロングシートで、室内灯は蛍光灯です。登場時の塗装は、上半分がクリーム色、下半分が緑色のツートンカラーでした。この塗装は、2013年に北勢線開業100周年を記念して復刻されています。

主要機器

主電動機

駆動システムには、神鋼電機製の垂直カルダン方式が採用されました。これは、主電動機を車輪に対して垂直に配置する方式です。このため、床下にギアボックスを収めるスペースがなく、運転台直後の床面が少し持ち上げられています。しかし、この構造は保守が難しく、電装解除の原因となりました。

制御器

制御器には、日本車輌製造製の電動カム軸式制御器が採用されました。これにより、スムーズな加速と総括制御運転が可能になりました。また、発電ブレーキによる抑速制動機能も備えていました。多客時には、この抑速制動機能を無効化することもできました。

パンタグラフ

パンタグラフは、4401(M-1)の運転台寄りに設置されました。4401(M-2)には、750Vの母線を通して給電されました。各車体間には、太い高圧引き通し線が接続されており、絶縁を確保するため、連結面窓の直下に大型のジャンパ栓受が設けられました。

ブレーキ

ブレーキは、発電ブレーキとSME-D空気ブレーキを組み合わせたものが採用されました。ブレーキシリンダーは、台車に直接取り付けられていました。空気圧は、4401(M-2)に搭載された空気圧縮機から供給されました。

台車

台車は、日本車輌製造製のND-106（電動台車）と106A（付随台車）が使用されました。いずれも、ウィングバネ式台車で、当時としては一般的な設計でした。ND-106は、垂直カルダン機構を収めるために、大型化されていました。ND-106Aは、将来的に電動化できるように設計されていました。

連結器

連結器は、三重線の標準であるピン・リンク式連結器が使用されました。

運用

三重交通・三重電鉄時代

竣工当初は、三重線の看板電車として活躍しました。当初は4車体連接車とすることも計画されていましたが、メンテナンスの難しさから実現しませんでした。1960年には、4401（T-1）はサ4400形に形式変更されました。1964年の湯の山線改軌に伴い、北勢線に転用されました。

近鉄時代

1965年の近鉄合併に伴い、モ4400形はモ200形に、サ4400形はサ100形に改番されました。塗装も近鉄標準のマルーン1色になりました。しかし、垂直カルダンの問題は解決せず、1971年に電装解除されました。その後、モ200形は運転台を撤去され、サ200形に改造されました。1977年からは、新造されたモ270形と固定編成を組むようになり、サ202の旧運転台が復活し、ク200形に改番されました。この際、前面形状がモ270形に準じたものに変更され、ブレーキも変更されました。1990年には、特殊狭軌線新標準色となり、1992年にはブレーキが再度変更されました。

三岐鉄道譲渡後

2003年の北勢線移管に伴い、三岐鉄道に所属することになりました。ワンマン化工事が行われ、運賃箱が設置されました。その後、塗装が黄色を基調としたものに変更されましたが、2013年には三重交通時代の復刻塗装となりました。

脚注

注釈

垂直カルダン駆動方式は、主電動機を車輪に対して垂直に配置する方式で、床下のスペースを有効活用できるメリットがありましたが、保守に手間がかかるというデメリットもありました。

出典

Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E9%87%8D%E4%BA%A4%E9%80%9A%E3%83%A24400%E5%BD%A2%E9%9B%BB%E8%BB%8A