三重海軍航空隊

三重海軍航空隊：太平洋戦争下のパイロット養成機関

三重海軍航空隊は、太平洋戦争中の日本海軍において、パイロットや整備員といった航空要員を育成するための重要な教育機関でした。1942年（昭和17年）8月1日、三重県一志郡香良洲町の雲出川河口デルタの埋め立て地を利用して設立されました。その目的は、戦争激化に伴い急増する需要に応えるため、飛行予科練習生（予科練）の教育訓練を効率的に行うことにありました。

当初は、予科練の中でも伝統ある乙種飛行生を中心に受け入れる計画でしたが、ミッドウェー海戦での日本海軍の大敗を機に、より短期間で育成できる甲種飛行生も受け入れることとなり、計画は変更を余儀なくされました。甲種と乙種の飛行生は、土浦海軍航空隊において対立関係にあると問題視されていたため、三重海軍航空隊では両者の分離を目指した教育体制の構築が試みられましたが、すぐに頓挫しています。

三重海軍航空隊は、横須賀鎮守府第11連合航空隊に所属し、多くの予科練課程を実施しました。開隊から終戦までの間に、甲種、乙種、丙種といった様々な飛行予科練習生課程や、特殊乙種飛行予科練習生といった特殊な課程も実施されました。開隊時には、岩国海軍航空隊や土浦海軍航空隊から練習生が転入しています。

戦争が激化し、戦局が悪化していく中で、三重海軍航空隊は、他の航空隊への練習生の転籍や転出を繰り返しながらも、人材育成を続けました。しかし、1945年（昭和20年）に入ると、他の航空隊への人員の転出や、予科練教育そのものの縮小など、機能は徐々に低下していきました。同年6月には、予科練教育は完全に凍結されました。

三重海軍航空隊は、名古屋大空襲の際も、B29爆撃機が三重飛行場を避け、名古屋市方面に向かったという逸話も残されています。これは、三重海軍航空隊が戦略的に重要な位置に存在していたわけではなかったことを示唆しているかもしれません。

終戦後、三重海軍航空隊は解隊され、広大な飛行場跡地は民間に払い下げられ、現在では津市の土地整備計画の一環として活用されています。飛行場施設は完全に撤去されましたが、隊門や煉瓦塀などの遺構の一部が現存し、津市香良洲歴史資料館において、その歴史を偲ぶ展示物が公開されています。

三重海軍航空隊は、太平洋戦争下の日本海軍航空力の維持に貢献したものの、戦争の激化とともにその役割は変化し、最終的には解隊という道を辿りました。その歴史は、戦争の激しさや、人材育成の困難さを改めて認識させる、重要な史実となっています。 三重海軍航空隊に関する記録は、『日本海軍編制事典』、『航空隊戦史』、『日本海軍航空史2』、『戦史叢書　海軍航空概史』、『海軍飛行豫科練習生1』、『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』といった文献に散見されます。これらの文献を参照することで、三重海軍航空隊のより詳細な活動状況を知ることができます。

歴代司令

内田市太郎：昭和17年8月1日-
古瀬貴季 大佐：昭和18年5月20日-
* 加藤尚雄 予備少将：昭和20年4月11日-昭和20年9月15日解隊

主要機種

教育訓練部隊であったため、特定の航空機は配備されていませんでした。

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