土浦海軍航空隊

土浦海軍航空隊

土浦海軍航空隊（つちうらかいぐんこうくうたい）は、日本海軍の航空部隊および教育機関の一つです。略称は「土空（つちくう）」と呼ばれていました。この航空隊は、予科練（海軍飛行予科練習生）の教育を専門とする機関として重要な役割を果たしました。元々は霞ヶ浦海軍航空隊の一部でしたが、予科練生の増加に伴い、独立した組織として再編されました。

設立の背景

1925年（大正14年）に開隊した霞ヶ浦海軍航空隊は、初期から航空機の実機訓練を行っていました。1939年（昭和14年）には横須賀海軍航空隊から予科練が移転してきましたが、日華事変の長期化と対米英戦を視野に入れた軍拡により、霞ヶ浦航空隊での訓練強化が求められました。そこで、初歩的な操縦訓練前の予科練習部を分離し、より高度な訓練を行うためのスペースを確保する必要が生じました。この結果、1940年（昭和15年）11月15日に、鹿島海軍航空隊の開隊によって使用されていなかった茨城県稲敷郡阿見村の霞ヶ浦航空隊水上機練習場跡に、土浦海軍航空隊が設立されることになりました。

教育と訓練

土浦航空隊には、霞ヶ浦航空隊から全ての予科練生が移籍したため、甲種、乙種、丙種の予科練生が同時に在籍することになり、特に甲種と乙種の間には深刻な対立が生じました。この問題は、後発の三重海軍航空隊や鹿児島海軍航空隊の設立につながりましたが、戦況の悪化により甲乙分離計画は実現しませんでした。土浦海軍航空隊は、予科練教育の中核として、多くの若者を航空兵へと育成しました。

1943年（昭和18年）には、東宝映画が製作した戦争映画「決戦の大空へ」の撮影に全面協力しました。この映画は予科練生徒の勧誘を目的としており、土浦航空隊がロケ地となり、隊員の訓練風景や施設の様子が記録されています。

戦後の跡地

戦後、土浦海軍航空隊の跡地は、様々な形で利用されています。西側の第一海軍航空廠があった地域は、一部が国鉄療養所や引揚者住宅となりましたが、武器関係の整備施設や滑走路は霞ヶ浦駐屯地として現在も使用されています。霞ヶ浦に面した土浦海軍航空隊跡地（青宿地域）は、1952年（昭和27年）に立川から移転した保安隊武器学校が利用し、旧司令部庁舎などの施設は陸上自衛隊の重要教育機関として機能しています。1980年（昭和55年）には、武器学校の敷地内にある雄翔園に『若鷲の歌』の歌碑が建立されました。また、隣接地域には2010年に予科練平和記念館が開館し、予科練の歴史を伝えています。土浦航空隊の北側は、引揚者によって開拓され、整然とした農地として残っています。

近隣の霞ヶ浦海軍航空隊跡地の一部は、協和発酵キリン（現MCフードスペシャリティーズ）や井関農機の工場となっています。また、霞ヶ浦航空隊本部のあった場所には、霞ヶ浦農科大学が開校し、後に茨城県立農科大学、茨城大学農学部と変遷しましたが、航空隊時代の建物が校舎として使用されていました。さらに、旧医務室は土浦協同病院の分院として開院し、その後、東京医科大学霞ヶ浦病院を経て、現在は東京医科大学茨城医療センターとなっています。

主要機種

土浦海軍航空隊では、主に以下の機種が使用されていました。

零式水上初歩練習機
九三式中間練習機

歴代司令

土浦海軍航空隊の歴代司令官は以下の通りです。

青木泰二郎 大佐：1940年11月15日 -
長谷川喜一 大佐：1942年4月25日 -
松岡知行 少将：1942年11月1日 -
荒木敬吉 大佐：1943年3月1日 -
渡邊謙次郎 大佐：1944年8月7日 -
藤吉直四郎 少将：1945年6月30日 - 解隊

参考文献

『日本海軍航空史2』時事通信社、1969年
『戦史叢書　海軍航空概史』朝雲新聞社、1976年
『海軍飛行豫科練習生1』国書刊行会、1983年
『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』アテネ書房、1996年
『航空隊戦史』新人物往来社、2001年
『日本海軍編制事典』芙蓉書房出版、2003年

関連項目

大日本帝国海軍航空隊一覧
海軍飛行予科練習生
霞ヶ浦海軍航空隊
神奈川スケートリンク(横浜銀行アイスアリーナ): 土浦海軍航空隊の工廠倉庫(飛行場格納庫)を移築したものが元になっています。

土浦海軍航空隊は、その歴史の中で多くの若者を育成し、日本の航空史に大きな足跡を残しました。

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