三重県立熊野古道センター

三重県立熊野古道センター：伊勢路と東紀州の魅力を発信する拠点

三重県尾鷲市向井に位置する三重県立熊野古道センターは、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の東の入り口として、熊野古道の魅力を国内外に発信するビジターセンターです。難所として知られる八鬼山の東約1km、尾鷲湾と市街を一望できる高台に建ち、訪れる人を魅了する景観を誇ります。

センターの概要：自然と文化が織りなす空間

センターは、尾鷲桧をふんだんに使用した木造建築の展示棟と交流棟から構成されています。展示棟では、熊野古道伊勢路の自然、歴史、文化に関する常設展示や企画展を開催。一方、交流棟は地域住民と観光客の交流拠点として、毎週多彩なイベントが催され、地域住民の憩いの場となっています。

センターの管理運営は、熊野古道の保存・研究活動に長年携わってきた特定非営利活動法人「熊野古道自然・歴史・文化ネットワーク」が行っています。職員は7名で、地域に密着した活動を行っています。敷地内には、尾鷲市が運営する「夢古道おわせ」も隣接しており、相乗効果による地域活性化に貢献しています。

開館の経緯：地域活性化と世界遺産登録が後押し

熊野古道伊勢路は、古くから伊勢神宮と熊野三山を結ぶ重要な道として利用されてきましたが、交通網の発達により次第に忘れ去られていきました。1970年代頃より、一部の地域住民による古道の復元やウォーキングイベントなどの活動が始まり、その活動が、後のセンター設立へと繋がります。

一方、東紀州地域は過疎化が課題となっており、三重県は1997年に地域活性化構想を発表。当初は紀北地域に海洋深層水利用施設の建設が計画されていましたが、採算性などの問題から頓挫。その代替案として提案されたのが、熊野古道センター構想でした。

1999年の「東紀州体験フェスタ」は約6万人を集め、熊野古道への関心を高めるとともに、世界遺産登録に向けた機運醸成に貢献。2001年に熊野古道センター構想が三重県議会で発表され、2004年の世界遺産登録を追い風に、2005年に着工、2007年2月10日に開館しました。

設計と建築：日本の伝統技術と現代技術の融合

熊野古道センターは、地元産の尾鷲桧や熊野杉をふんだんに使用した、日本最大級の木造建築物です。木造軸組構法をヒントにした独自の「等断面集積木材構法」を採用し、柱間10.5m、軒高6.7mという広々とした空間を実現しています。

建築設計には、公募プロポーザル方式を採用。若手建築家の参入を促し、透明性のある選定プロセスが実施されました。その結果、数々の建築賞を受賞するなど、建築物としても高く評価されています。建築面積3,366.82㎡、延床面積2,439.69㎡、総事業費は約21億円にのぼります。

使用された尾鷲桧は、環境負荷を低減するため、広範囲から少しずつ伐採されたもので、1本1本に産地証明書が付されています。当初は150mm角の木材を使用する計画でしたが、入手困難なため135mm角に変更。地元で流通している木材規格を活用したことで、国産木材の利用拡大の可能性を示すことにも繋がりました。

施設概要：展示、交流、研究を融合した複合施設

センターは、展示棟、交流棟、研究収蔵棟の3棟から構成されています。

展示棟では、常設展示室と企画展示室、映像ホールなどを備え、熊野古道伊勢路の自然、歴史、文化を多角的に紹介しています。タッチパネル式の地形模型やジオラマ、高品質の映像資料など、様々な展示方法で来館者を魅了します。

交流棟は、地域住民と観光客の交流を目的とした空間。広々としたロビー、体験学習室、イベントホールなどを備え、自由な利用が可能です。

研究収蔵棟は、図書資料室、特別展示室、収蔵庫を備え、大学との連携による研究活動拠点として機能しています。熊野古道に関する貴重な資料を収集・保存し、公開しています。

センターの特色：地域に根付いた活動

熊野古道センターは、博物館としての機能に加え、地域住民にとっての憩いの場としての役割を重視しています。そのため、ほぼ毎週様々なイベントが開催され、地域住民との繋がりを強めています。

イベントは、センター主催のもの、他団体との共催、施設貸与の3種類があり、料理教室、手作り教室、古道ウォーキング、植物観察会、講演会、コンサートなど、多様なプログラムが用意されています。

また、熊野古道の自然、歴史、文化に関する研究活動にも積極的に取り組んでおり、「みえ熊野学」と名付けられた独自の研究活動を進めています。三重大学や筑波大学など、大学機関との連携も図りながら、研究成果を発信しています。

利用案内

熊野古道センターは、熊野古道初心者から経験者まで、幅広い層の来館者に対応しています。入館料は無料です。

開館時間：9時～17時
休館日：1月1日、12月31日（その他臨時休館あり）

アクセスは、JR紀勢本線尾鷲駅から尾鷲市ふれあいバスを利用するか、車でのアクセスが便利です。名古屋方面からは紀勢自動車道尾鷲北IC、和歌山方面からは熊野尾鷲道路尾鷲南ICからアクセスできます。

まとめ

三重県立熊野古道センターは、熊野古道の魅力を発信するだけでなく、地域活性化にも大きく貢献する重要な拠点となっています。木造建築の美しさ、充実した展示、多彩なイベント、そして地域住民との連携など、多くの魅力を備えた施設です。熊野古道を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

もう一度検索