三鬼陽之助

三鬼陽之助：財界のご意見番、その生涯と功績

三鬼陽之助（みき ようのすけ、1907年8月3日 - 2002年10月5日）は、日本の経済評論家であり、その鋭い視点から「財界のご意見番」と称されました。三重県尾鷲市に生まれ、法政大学法学部を卒業後、ダイヤモンド社で経済記者としてのキャリアをスタートさせました。その後、東洋経済新報社を経て、1953年に財界研究所を設立し、雑誌『財界』を創刊しました。

経済評論家としての活動

三鬼陽之助は、戦後の経済復興期において、多くの企業経営者たちを詳細に取材し、その経営手腕や企業の内情を深く分析しました。彼の評論は、単なる表面的な分析にとどまらず、企業内の人間関係や抗争、経営者の思想や行動原理にまで及びました。特に、企業トップが常に現場に立って状況を把握することの重要性を強調し、自らの評論活動でもこの現場主義を貫きました。

「財界四天王」の命名

三鬼陽之助は、永野重雄（元日本商工会議所会頭）、小林中（元日本開発銀行総裁）、桜田武（元日経連会長）、水野成夫（元産経新聞社長）の4人を「財界四天王」と名付け、その活躍を広く世に知らしめました。彼らの存在は、当時の日本経済を牽引する象徴的な存在として、多くの人々に影響を与えました。

著書と影響

三鬼陽之助の著書は101冊にも及び、『東芝の悲劇』や『日産の挑戦』など、企業内部の事情を詳細に描いた作品が多く、多くの読者を獲得しました。彼の著作は、単なる経済評論の枠を超え、企業の盛衰や経営者の実態を人間ドラマとして描いた点が特徴です。また、『毛沢東語録入門』のように、経営戦略のヒントを異なる分野から見出す斬新な視点も持ち合わせていました。これらの著作を通じて、経営者やビジネスマンだけでなく、一般の読者にも経済や経営に対する理解を深める機会を提供しました。

現場主義と独自の視点

三鬼陽之助の評論活動の特徴は、徹底した現場主義でした。彼は、机上の空論ではなく、実際に企業や経営者の現場に足を運び、直接取材することで、より深く、よりリアルな分析を行いました。その独自の視点と鋭い洞察力は、多くの読者を魅了し、経済界だけでなく、社会全体にも大きな影響を与えました。

晩年と遺産

三鬼陽之助は、2002年に95歳で亡くなるまで、経済評論家として活躍し続けました。彼の著書や評論は、現代においても企業の経営やリーダーシップを考える上で貴重な資料となっています。また、彼が提唱した現場主義の重要性や、企業の内情を深く掘り下げる視点は、現代のビジネスパーソンにとっても重要な教訓となっています。佐藤正忠による回想評伝『三鬼陽之助　筆者だけが知る「財界指南役」の実像』は、彼の生涯と業績をより深く理解するための重要な資料です。

主な著書一覧

会社と経営者 (1936)
財界夜明け前 (1947)
財界夜話 (1949)
財界新人物論 (1949)
財界巷談 (1952)
億万長者 (1953)
兜町 (1953)
財界新山脈 (1953)
金融 (1953)
財界 (1954)
五島慶太伝 (1954)
財界人夜話 (1956)
三鬼陽之助選集 全4巻 (1957)
新財界夜話 (1957)
政界金づる物語 (1959)
抜討ち財界 (1959)
億万長者への道 (1961)
財界首脳部 (1962)
会社首脳部 (1963)
資本主義のために (1963)
日本を動かすトップ会社 (1964)
事業経営の鬼たち (1964)
悲劇の経営者 (1964)
企業戦争 (1964)
経営者のために (1964)
社長への直訴状 (1964)
日本の銀行家 (1965)
社長のサラリーマン時代 (1965)
経営者の闘魂 (1965)
激動期の経営者 (1965)
東芝の悲劇 (1966)
現代の労働者 (1966)
企業は戦争なり (1966)
HONDA商法 (1966)
三菱紳士 (1966)
次の社長は誰だ (1966)
石坂泰三 (1967)
慶應義塾 (1967)
これが経営者か (1967)
日産の挑戦 (1967)
夜の財界首脳部 (1967)
財界無血革命 (1968)
経済事件の主役たち (1968)
決断力 (1968)
戦前派社長は引退せよ (1969)
経営者チェック集 (1969)
ビジネスマン人国記 (1969)
勝ち残る経営 (1969)
合併戦争 (1969)
サラリーマンタブー集 (1969)
女房タブー集 (1969)
勝機をつかむ (1970)
情報力 (1970)
政治力 (1970)
揺れる財界 (1971)
後継者 (1971)
三鬼陽之助の危ない会社 (1971)
毛沢東語録入門 (1972)
経営者五十戒 (1972)
事件を斬る (1972)
社長よ、裏切るな! (1973)
社長よ驕るなかれ (1973)
同族の悲劇 (1973)
ある経営者の生涯 (1973)
社長の受難時代 (1974)
三鬼陽之助人物論選集 (1974)
麦酒戦争 (1974)
若い社員諸君へ (1974)
献金金脈 (1975)
三木武夫 交友50年の素顔 (1975)
喧嘩のしかた (1975)
経営者の戦争 (1976)
経営者の条件 (1976)
人事異動の論理 (1976)
三鬼戦法 (1977)
社長が自殺を考える時 (1977)
三鬼社長学 全5巻 (1977)
生き残るサラリーマンの条件 (1979)
信賞必罰の論理 (1982)
社長よ命を賭けろ (1983)
財界四天王の遺訓 (1985)
成功する経営・失敗する経営 (1986)
私の財界昭和史 (1987)
この財界事件は何を教えているか (1987)
闘魂の経営者 (1988)
決断と活路 (1989)
先輩経営者の闘魂訓 (1990)
本田宗一郎が教えたこと (1992)
混乱時代の経営者の活路 (1993)
難局を処する (1995)

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