小林中

小林中の生涯と業績

小林中（こばやし あたる、1899年2月17日 - 1981年10月28日）は、戦後の日本において重要な位置を占めた実業家であり、財界の実力者として知られています。彼は初代日本開発銀行（現在の日本政策投資銀行）総裁を務めた他、日本航空会長や東急電鉄社長、富国生命保険社長などを歴任し、影の財界総理と称されました。その背景には、彼の卓越したリーダーシップと広範な人脈がありました。

生い立ちと教育

小林中は山梨県中巨摩郡源村（現在の南アルプス市）に生まれ、父の矢崎貢と母のふくのもとで育ちました。彼は1899年に母方の祖父の養子となり、1901年には家督を相続しました。その後、旧制甲府中学校から上京し、当初は慶應義塾大学に進学を試みましたが失敗し、早稲田大学に入学しました。しかし、学業の末に中退しました。

実業家としてのキャリア

1922年、故郷に戻り石和銀行の取締役兼支配人を経て、1929年には富国徴兵保険相互会社に入社しました。ここで彼は社長秘書として根津嘉一郎からの指導を受け、番町会という少壮実業家グループに参加し、重要な人脈を築いていきました。しかし、1934年には帝人事件に連座し、しばらく投獄されることになりますが、最終的には無罪となり、復帰後に富国生命保険の社長に就任することになります。

日本開発銀行総裁としての功績

1951年、小林は日本開発銀行の初代総裁に就任し、政府からの政治的圧力を拒む姿勢を貫きました。彼は銀行の業務を市中銀行の肩代わり融資に限定しないように提案し、基幹産業への直接融資を実施しました。この方針により、鉄鋼、自動車、造船といった産業への投資が促進され、日本の戦後復興に寄与しました。彼の信頼性と業務遂行能力は高く評価され、汚職事件からも無縁であることが強調されています。

財界の重鎮としての影響力

1956年には産業計画会議委員に就任し、翌年には辞任。その後は「天下の素浪人」と名乗りながらも、多くの財界関係者が彼を訪れました。池田勇人が首相となると、小林は引き続き財界において影響力を持ち続けました。彼は数多くの企業の役員として活動し、アジア経済研究所や海外技術協力事業団の初代会長も務めるなど、精力的に活動を続けました。

晩年と評価

1981年、小林は82歳で亡くなりました。彼は出身地の石和町の名誉町民であり、その功績が認められて正三位・勲一等旭日大綬章を受章しました。小林中はその生涯を通じて、日本の経済発展に貢献し続け、多くの後進に影響を与えた偉大な実業家でした。彼の経歴と業績は、現代日本の財界の礎を築くものとして長く語り継がれることでしょう。

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