三鬼隆

三鬼隆の生涯と業績

生い立ち

三鬼隆（みきたかし）は1892年1月14日、岩手県盛岡市に生まれました。彼の父、三鬼鑑太郎は岩手県庁の官吏であり、後に実業家や政治家としても知られるようになります。彼は五男四女の家族の中の二男でしたが、兄を早くに失ったため、実質的には長男として成長しました。盛岡師範学校付属小学校を経て、盛岡中学に進学し、その後、東京帝国大学法科大学独法科を卒業します。しかし、卒業後は1年間の就職浪人を経験しました。

田中鉱山でのキャリア

三鬼は1918年、父の友人の紹介で田中鉱山に入社します。この時、田中鉱山は株式会社に改組されたばかりで、商家の雰囲気が残っていました。彼は社長の息子である田中長一郎の下で調査課に配属され、翌年には釜石鉱業所の庶務主任として転任しました。この時期、三鬼は激しい労働争議の渦中にあり、労使協調の重要性を痛感します。

1920年には、労使協調組織「真道会」を発足させ、社員の福利厚生に貢献しました。この取り組みは家族をも巻き込むもので、水泳場や文化サークルの設立を通じて、企業内のコミュニティを形成しました。彼はまた、町議会選挙にも積極的に関与し、町議会議員として3期を勤めました。

三井との関係

しかし、経済状況の変化により、1924年に三井に鉱山の経営が譲渡されます。三鬼は釜石鉱山本店の庶務主任として勤務しつつ、釜石鉱業所庶務課長として再び釜石に戻ります。在職中、スポーツの振興にも力を入れ、釜石市内での運動会の開催など、地域のコミュニティ活動の一環として活動しました。また、地域のスポーツクラブを組織し、陸上競技部や野球部の強化に努めました。彼は地域社会のスポーツ振興にも寄与しました。

日本製鐵への道

1934年には製鉄業の大合同に伴い日本製鐵が設立され、三鬼は同社の参事および釜石製鉄所庶務部長に就任しました。第二次世界大戦中には製鉄所の所長職や取締役として活躍しました。戦後、日本製鐵社長の渡辺義介が追放された際には、三鬼が社長に就任する運びとなります。

彼は度重なる苦境の中で日本経済の復興を目指し、経済安定本部の顧問や、日本経営者団体連盟の常務理事などを歴任しました。特に電力業界での民主化への寄与が評価され、電気事業再編成審議会に参加し、日本発送電の縮小提案を行います。このようにして、彼は製鉄業のみならず、広い視野で日本経済の復興に貢献しました。

最期とその影響

1952年4月9日、三鬼は日航機もく星号の墜落事故で亡くなります。享年61歳の彼の死は多くの人々に衝撃を与え、特に地域や業界への影響が大きかったと評されます。彼の娘もまた、航空業界でスチュワーデスとして活躍し、父の遺志を引き継ぐかのように、自立した職業選択を称賛しました。

釜石市には彼の銅像が建てられ、スポーツ振興や地域社会への彼の貢献が後世にわたって語り継がれています。また、彼との縁がある人々はメディアで取り上げられるなど、三鬼隆の名は今なお多くの人々に知られています。彼の人生は日本の実業界だけでなく、地域社会への貢献の重要性を如実に示すものでした。

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