釜石鉱山

釜石鉱山：150年を超える歴史と変貌

岩手県釜石市と遠野市にまたがる釜石鉱山は、明治時代初期の開坑以来、150年以上にわたって鉄鉱石の採掘を続け、日本の近代化に貢献した歴史を持つ鉱山です。北上山地の沿岸部に位置し、鉄鉱石のほか、金、銀、銅、鉛、亜鉛なども産出していました。

鉱山としての歴史と閉山

釜石鉱山の歴史は、1727年（享保12年）に阿部将翁が仙人峠で磁鉄鉱を発見したことに始まります。その後、幾多の試掘を経て、1886年（明治19年）に田中長兵衛とその番頭である横山久太郎らが民間で本格的な製鉄に成功。1887年には釜石鉱山田中製鉄所が設立されました。

その後、三井鉱山を経て、1939年（昭和14年）には日本製鉄の子会社となります。20世紀後半には大規模な鉄鉱石の採掘が行われましたが、1993年（平成5年）に主要な鉄鉱石の採掘は終了しました。

閉山後の多様な展開

閉山後、釜石鉱山は鉱山としての機能を終えたわけではありません。良質な鉄鉱石は、現在も年間100トン程度、研究用途などで採掘されています。

当初はワイン用ブドウ栽培や川魚の養殖などの代替事業も試みられましたが、採算に合わず撤退しました。しかし、地下350メートルから湧き出る鉱泉水を活用したミネラルウォーター「仙人秘水」の製造販売は成功を収め、新たな収益源となっています。

さらに、地下200メートルにある鉱体の採掘跡に水を貯め、地下500メートルの発電施設までの落差を利用した地下水力発電所も建設され、環境に配慮したエネルギー供給も行っています。

閉鎖された坑道は、観光資源としても活用されています。かつては電気軌道とトロッコによる坑道ツアーが行われていましたが、現在はトロッコの修理が困難になったため、自動運転のゴルフカートが導入されています。また、広大な地下空洞は地質調査や地震計設置などの学術研究にも利用され、コンサートホールとしても活用されるなど、多様な用途に利用されています。2007年には経済産業省より近代化産業遺産に認定されました。

地質と鉱物

釜石鉱山の地質は、石炭系と二畳系の地層からなり、超塩基性、塩基性、酸性の火成岩類から構成されています。

まとめ

釜石鉱山は、その歴史と技術革新、そして資源の有効活用という点で、日本の近代化産業遺産として貴重な存在です。閉山後も様々な事業展開を行い、地域社会に貢献し続けている姿は、今後の産業遺産活用のモデルケースとして注目に値します。現在も、その歴史と自然を体感できる観光地として多くの人々を惹きつけています。

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