上原淳道

上原淳道(1921-1999)は、20世紀後半の日本における中国古代史研究において重要な役割を果たした学者です。東京府に生まれ、第一高等学校を経て東京帝国大学に進学しますが、太平洋戦争の勃発により学徒兵として従軍、戦火を経験します。戦後、東京大学文学部東洋史学科を卒業、同大学院に進み、その後母校の教養学部にて専任講師、助[[教授]]、教授と昇進しました。

上原氏は、中国古代史を専門とし、その深い知識と洞察力に基づいた研究活動で知られていました。特筆すべきは、中国大陸に渡ることなく、日本の資料に基づいて独自の研究を展開したことでしょう。これは当時の政治情勢や個人的な事情も影響していると考えられますが、結果として、彼の研究は既存の枠にとらわれない自由な視点に富んだものとなりました。

学究生活の傍ら、上原氏は独自の活動も展開していました。1963年から亡くなるまで、毎月ガリ版刷り、後にコピーによる一枚の通信「読書雑記」を刊行し続けました。これは、彼が信頼する限られた人にのみ送付された私的なもので、その内容は多岐に渡り、彼の幅広い読書と深い思考を垣間見ることができる貴重な記録です。選りすぐりの読者だけに送付され、信頼関係を重視したこの刊行物は、学術論文とは異なる、上原氏の知的な魅力を伝える媒体となりました。没後、妻である勝子氏の手によって全441号が収録された単行本が発行され、現在も多くの研究者や読書家によって読まれ、高く評価されています。

また、1961年にはフォード財団とアジア財団による日本での中国研究者への資金供与問題に強く反対するなど、学界における発言も積極的に行いました。これは彼の独立した立場と、研究活動に対する強い責任感の表れと言えるでしょう。

1982年に東京大学を定年退官後、名誉[[教授]]の称号を辞退し、関東学院大学教授として教鞭をとり続けましたが、1987年に退職。1999年に脳出血のため逝去しました。

上原淳道の著作としては、『政治の変動期における学者の生き方 上原淳道著作選1』、『「夜郎自大」について 上原淳道著作選2』、『上原淳道中国史論集』、『上原淳道読書雑記』などが挙げられます。さらに、郭沫若の『中国古代の思想家たち』の翻訳にも携わっています。これらの著作は、現在も中国史研究の重要な参考文献として活用されており、彼の業績が後世に大きな影響を与えていることを示しています。

上原淳道は、学徒兵としての経験、そして中国大陸へ渡ることなく独自の研究を展開した生涯を通じて、一貫して知的な探求を続けました。彼の残した著作や「読書雑記」は、単なる学術的な成果だけでなく、時代を超えて多くの人々に思考の刺激を与え続けるでしょう。 彼の生き方と研究姿勢は、現代の研究者にとっても大きな示唆を与えてくれるものと言えるでしょう。

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