上原美術館

上原美術館：仏教美術と近代絵画の融合

上原美術館は、静岡県下田市宇土金に位置する私立美術館です。この美術館は、仏教美術と近代絵画という二つの主要なコレクションを特徴としており、多様な芸術愛好家にとって魅力的なスポットとなっています。運営は公益財団法人上原美術館が行っています。

概要

上原美術館は、1983年5月に開館した上原仏教美術館と、2000年3月に開館した上原近代美術館が合併し、2017年11月に新たな美術館としてスタートしました。この合併により、仏教美術と近代絵画という二つの異なるジャンルを同時に楽しめる、ユニークな美術館となりました。

収蔵品の中核は、大正製薬名誉会長の上原正吉・小枝夫妻からの仏教美術品の寄贈と、同じく大正製薬名誉会長である上原昭二氏からの近代絵画コレクションの寄贈によって構成されています。特に仏教美術の分野では、1983年の開館当初から地域の仏像調査に積極的に取り組み、多くの文化財指定に貢献しています。

沿革

1978年：上原正吉・小枝夫妻により、上原小枝の故郷である隣接地に曹洞宗向陽寺が再興され、上原家の菩提寺となる。
1981年：向陽寺境内に達磨大姉堂が建立され、秦慧玉永平寺貫首を招いて開眼供養を実施。この際、約130体もの仏像の譲り受けと安置が依頼される。
1983年：上原正吉・小枝夫妻により上原仏教美術館が設立。
1997年：上原昭二が自身の古稀を記念して近代美術館の設立を計画、高田馬場に準備室を設置。
2000年：上原昭二がコレクションを元に上原近代美術館を設立。
2011年：両運営法人（財団法人上原仏教美術振興財団、財団法人上原近代美術館）が共に公益財団法人へ移行。
2013年：上原近代美術館が上原仏教美術振興財団を吸収合併。公益財団法人上原美術館へ改称。「薬師如来展」の大盛況を機に、リニューアルを計画。
2015年：休館し、リニューアル工事に入る。
2017年：両館が合併し、上原美術館として再開館。
2021年：主任学芸員の田島整氏が、文化財調査、講演、授業などの地域貢献により伊豆賞を受賞。
2024年：伊豆急行蓮台寺駅のネーミングライツを2026年までの契約で取得。

収集・展示

上原美術館では、印象派、マティス、ピカソ、安井曽太郎、須田国太郎、小林古径などの絵画や、平安・鎌倉時代から近現代にかけての仏像、奈良時代の古写経など、幅広い美術品を収蔵・展示しています。これにより、来館者は多様な文化や時代背景を持つ作品を鑑賞することができます。

主な所蔵品

仏教美術

十一面観世音菩薩立像（平安時代、10世紀、重要美術品）
二天像（平安時代、11世紀後半）
薬師如来坐像（平安時代、12世紀）
菩薩立像（中国・宋時代、13世紀）
阿弥陀如来立像（鎌倉時代、文永7年、13世紀）
大日如来像（鎌倉時代、文永7年、13世紀）
紫紙金字華厳経断簡（奈良時代、8世紀）

近代絵画

アンドレ・ドラン《裸婦》
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《アルジャントゥイユの橋》
クロード・モネ《雪中の家とコルサース山》
小林古径《芥川》《杪秋》
須田国太郎《ハッカ》
岸田劉生《麗子微笑像》

教育・対外活動

上原美術館では、創設者である上原小枝氏の故郷の文化発展への貢献という願いに基づき、様々な教育活動が行われています。地域社会との連携を重視し、子供から大人まで幅広い層を対象としたプログラムを提供しています。

出張授業・授業入館：学芸員が下田市をはじめとする近隣市町村の小中学校へ出張し、美術や仏教に関する授業を行っています。また、館内での授業も実施しています。
アトリエ教室：絵画、彫刻、写経などの教室を開催し、参加者に創作の機会を提供しています。
* 対外活動：学芸員がTVやラジオ番組への協力、市民大学等での講演、ワークショップ、近隣寺院での文化財調査、近隣自治体の町史編纂への参画など、多岐にわたる活動を行っています。

上原美術館は、美術品の展示だけでなく、教育活動や地域貢献にも力を入れている点が特徴です。訪問者にとっては、美術鑑賞を通じて豊かな知識や経験を得られる場所となっています。

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